シンガポール通貨監督庁(MAS)は13日、ステーブルコインに関する規制制度の詳細を固め、法案の草稿作成に着手した。
これは、同日開かれたシンガポール・フィンテック・フェスティバル2025で、MASのチア・デルジュン長官が明らかにしたものだ。
中銀デジタル通貨(CBDC)の試験拡大も視野に入れており、MASはデジタル資産全体に対する包括的な規制枠組みの構築を進めている。
無規制リスクと規制対象の要件
MASが規制を急ぐ背景には、無規制のステーブルコインが引き起こすシステミックリスクへの警戒がある。
チア長官は「無規制のステーブルコインはペッグ維持の実績が不安定だ。繰り返されるペッグ崩壊は信頼を損ない、他のステーブルコインにも波及しかねない」と述べた。
MASはそうしたリスクを封じることで、シンガポールドル連動のステーブルコインを国際決済の基盤に据える狙いだ。
米国ではGENIUS法が成立し、各国で規制強化の流れが進むなか、シンガポールも信頼性と相互運用性を両立する仕組みづくりを進めている。
この一環として、MASは23年8月にステーブルコイン規制の枠組みを公表した。
発行者はシンガポールを拠点とし、以下の条件を満たす必要がある。準備資産は流通量の100%を保持し、月次の独立検証と年次監査を実施。
準備金はMASが承認する保管機関で分別管理され、最低基本資本は100万シンガポールドル(約1億2000万円)または年間運営費の50%以上と定められている。
そのほか、5営業日以内の償還対応、ホワイトペーパーによる情報開示、発行業務への専念、国内発行の義務などが求められる。
段階導入と今後の展望
現在は政策設計から法案作成フェーズに移行しており、新制度の施行には正式な法成立が前提となる。
複数通貨型やG10以外の通貨に連動するステーブルコインは、既存のデジタル決済トークン規制、または証券先物法の適用を受ける。
チア長官は「適切に監督されたステーブルコインは、将来の金融ネットワークで重要な役割を担う」と述べた。
MASはリスク抑制とイノベーション促進の両立に加え、国際的な基準との整合性も重視する方針だ。
新法には既存発行者向けの移行期間が設けられる見通しで、市場混乱を避けるため、準備金の監査や償還手続きの厳格な運用が求められる。
G10以外の通貨に連動するステーブルコインや、海外で発行されたステーブルコインはMAS規制の対象外となるため、市場は複数の規制階層に分かれている。
CBDC試験の詳細は明らかにされていないが、統合的なデジタル資産戦略の一環として位置づけられており、暗号資産(仮想通貨)投資環境にも一定の影響を与えるとみられる。
