ステーブルコインとは、法定通貨や商品などの価格と連動するように設計された、価格が安定した暗号資産(仮想通貨)の一種です。日本国内では2023年6月に資金決済法が改正されたことで、ステーブルコインが今後より流通していくことが見込まれています。
本記事ではそもそもステーブルコインとは何なのかを紹介し、ビットコインとの違いや種類、関連銘柄まで幅広く解説していきます。ステーブルコインについて知識を深めたいと思う方は、ぜひ最後までご覧ください。
ステーブルコインとは?
ステーブルコイン(Stable Coin)とは、価格の安定性を目指して設計された特殊な仮想通貨です。ビットコインやアルトコインと異なり、法定通貨や金などの資産と連動するよう設計されており、価格変動を最小限に抑えることを目的としています。
特に法定通貨(米ドルなど)にペッグ(紐付け)されることが多く、1コインが1ドルの価値を維持することを目指しています。この安定性により、ステーブルコインは以下のようなメリットを持ちます。
- 決済手段としての信頼性:価値が安定しているため、日常的な取引や商取引、ICO仮想通貨の購入に適している
- 仮想通貨取引の仲介役:価格変動の激しい草コインなどから一時的に資金を退避させる際の「避難所」として機能
- 国際送金の効率化:従来の銀行システムよりも迅速かつ低コストで国際送金が可能
- DeFi(分散型金融)への参加:安定した価値を持つため、様々なDeFiプロトコルで活用されている
ステーブルコインはブロックチェーン技術を基盤としながらも、従来の金融システムと仮想通貨の世界をつなぐ橋渡し役として注目されています。その安定性と利便性から、個人投資家から機関投資家まで幅広い層に受け入れられつつあります。
一部のステーブルコインには、仮想通貨エアドロップで無料で手に入る機会も存在しています。
ステーブルコインとビットコインの違いは?
「ステーブルコインとビットコインの違いは何?」という疑問を持っている方が多いかと思います。そこで両者の違いを以下の表にまとめました。
特徴 | ステーブルコイン | ビットコイン |
---|---|---|
価格の安定性 | 高い | 低い |
価値の裏付け | 法定通貨や資産にペッグ | 自己完結型 |
使用目的 | 決済、送金、DeFiなど | 投資、価値保存 |
取引速度 | 高速 | 遅い |
ステーブルコインとビットコインは共に仮想通貨の一種ですが、その特性と用途には大きな違いがあります。順番に見ていきます。
価格の安定性
ステーブルコインとビットコインは、価格の安定性において大きく異なります。ステーブルコインは法定通貨や資産と連動するよう設計されており、価格変動が小さいのが特徴です。一方ビットコインは市場の需要と供給によって価格が決まるためボラティリティー(価格変動率の大きさ)が高く、安定性に欠けます。
ステーブルコインは1コインが1ドルなど特定の価値に固定されることが多く、決済手段として適していますが、ビットコインは投資やガチホ(長期保有)での価値保存の手段として捉えられることが多いです。この安定性の違いにより、両者は仮想通貨エコシステム内で異なる役割を果たしています。
価値の裏付け
ステーブルコインとビットコインは価値の裏付けにおいて大きく異なります。ステーブルコインは法定通貨や資産との連動を目指し、その価値を裏付けとしています。例えば米ドルにペッグされたステーブルコインは、発行額と同等の法定通貨や資産を担保として保有します。
一方ビットコインは自己完結型のシステムで、その価値は市場の需要と供給によって決定されます。ビットコインの価値は数学に基づく特徴や稀少性、利用者の信頼などが裏付けとなっており、中央管理者による保証はありません。
使用目的
使用目的も大きく異なります。ステーブルコインは主に日常的な決済や送金、さらにはDeFiプラットフォームでの利用など実用的な用途に適しています。
これに対しビットコインの購入は主に、投資や価値保存の手段として捉えられることが多いです。
取引速度
取引速度に関しては、ステーブルコインの方が一般的に迅速であるとされています。これは、ステーブルコインが様々なブロックチェーンプラットフォーム上で運用されており、より効率的な取引処理が可能だからです。
ステーブルコインの種類と特徴
ここからはステーブルコインの種類とそれぞれの特徴を見ていきます。ステーブルコインは価格の安定性を実現する上でそれぞれ異なった仕組みを持っているため、違いが分かりやすいように以下に表形式でまとめました。
種類 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
法定通貨担保型 | 特定の法定通貨にペッグ | 安定性が高く、使用しやすい | 発行元への信頼が必要 |
仮想通貨担保型 | 他の仮想通貨を担保にする | 仮想通貨と連動しやすい | 担保が不安定な場合、リスクが増加 |
コモディティ担保型 | 金などのコモディティに基づく | 物理資産の裏付けが強い | コモディティの価格変動の影響を受ける |
アルゴリズム型 | 市場の需給に基づき供給量を調整 | 柔軟な供給管理が可能 | 価格が安定しない可能性がある |
それでは、一つずつ細かく見ていきましょう。
法定通貨担保型
法定通貨担保型は、ステーブルコインの中で最も一般的かつ広く利用されている種類です。これらは米ドルやユーロなどの法定通貨と1:1の比率で価値が連動するよう設計されています。
主な特徴としては以下の通り。
- 法定通貨との連動により、価格の安定性が高い
- 暗号資産(仮想通貨)取引所での取引が容易で、流動性が高い
- 多くの場合、定期的な監査を受けて裏付け資産の存在を証明
利用例を一部抜粋すると、以下の通り。
- 取引所での取引ペアとして
- 国際送金の中継通貨として
- DeFiプロトコルでの担保や流動性提供に
しかし、法定通貨担保型にも課題があります。発行元の信頼性や資産管理の透明性が問題となることがあり、規制当局の監視も厳しくなっています。また、中央集権的な管理構造を持つため、完全な分散化を目指す仮想通貨の理念とは相反する面もあります。
それでもその安定性と使いやすさから、法定通貨担保型ステーブルコインは仮想通貨エコシステムにおいて重要な役割を果たしています。
暗号資産(仮想通貨)担保型
暗号資産(仮想通貨)担保型は、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨を担保として発行されるステーブルコインです。仮想通貨担保型はブロックチェーン技術とスマートコントラクトを活用して、分散型かつ透明性の高いシステムを実現しています。
仮想通貨担保型の主な特徴としては以下のものがあります。
- 価格変動リスクに備えて、通常100%以上の担保を要求
- ブロックチェーン上で担保状況をリアルタイムに確認可能
- 中央管理者を必要とせず、スマートコントラクトで運用
主な利用例としては、
- DeFiプラットフォームでの貸借取引
- 仮想通貨取引所での取引ペア
- クロスボーダー送金の中継通貨
などが挙げられます。
仮想通貨担保型ステーブルコインは特にDeFi分野での活用が進んでおり、貸借や流動性提供、デリバティブ取引など、様々な金融サービスの基盤となっています。
同時に留意しておくべき点もいくつかあります。まず担保となる仮想通貨の価格変動が大きい場合、システムの安定性が脅かされる可能性があります。
また過剰担保の要求により資本効率が低下することや、複雑なメカニズムのため一般ユーザーにとって理解が難しい場合があることも指摘されています。
コモディティ型
コモディティ型は、金や銀などの実物資産を裏付けとして発行されるステーブルコインです。コモディティ型は物理的な資産との直接的な連動性を持つことで、価値の安定性と信頼性を確保しています。
コモディティ担保型には以下の特徴が挙げられます。
- 金や銀などの実際の商品が担保となる
- コモディティの価値上昇がコインの価値に反映される
- 裏付け資産の存在と数量が定期的に監査される
主な利用例としては、
- ポートフォリオの分散化と資産保護
- コモディティ市場への簡易的なアクセス
- インフレーションヘッジとしての活用
などが挙げられます。
コモディティ型ステーブルコインは、実物資産との連動性により仮想通貨特有の高いボラティリティーを抑制しつつ、デジタル資産としての利便性を提供しています。
一方で気をつけなければならない点もいくつか存在します。まずコモディティ自体の価格変動の影響を受けるため、法定通貨に対する完全な価格安定性は保証されません。実物資産の保管や監査にコストがかかるため、運用コストが比較的高くなる傾向には留意しておく必要があります。
アルゴリズム型
アルゴリズム型は、複雑な数学的アルゴリズムと経済モデルを用いて価格の安定性を維持するステーブルコインです。アルゴリズム型は物理的な担保や中央管理者を必要とせず、完全に分散化されたシステムで運用されます。
アルゴリズム型ステーブルコインの主な特徴としては、以下の通り。
- 中央管理者や物理的担保を必要としない
- 市場の需給に応じてコインの供給量が自動的に変動
- 理論上、無制限に供給を増減できる可能性がある
主な利用例としては、
- DeFiプロトコルでの流動性提供
- 投機的取引の対象としての利用
- 分散型取引所での取引ペア
といったものがあります。
アルゴリズム型ステーブルコインは完全に分散化されたシステムであるため、検閲耐性が高く、理論上は無制限に拡張可能です。
一方でデメリットも存在します。市場の急激な変動に対して適切に対応できない場合があり、価格の安定性を保つことが難しいケースがあります。複雑なメカニズムのため、一般ユーザーにとって理解が難しく、予期せぬ結果を招く可能性もあります。
各種類のステーブルコインにはそれぞれ独自の特徴とメリット、デメリットがあります。利用目的や市場環境に応じて、適切な種類を選択することが重要です。
ステーブルコイン関連銘柄の一覧
ここからは、ステーブルコインの有名銘柄を国内外問わずに一覧で紹介していきます。
- テザー(USDT)
- USD Coin(USDC)
- DAI
- JPYC
- Binance USD(BUSD)
- Pax Dollar(PAX)
- ジパングコイン(ZPG)
①:テザー(USDT)
テザー(USDT)はステーブルコイン市場で最も広く使用されている銘柄の一つです。Tether Ltd.が発行し、主にドルを担保としています。テザーは仮想通貨取引所での決済手段として広く利用されており、国際送金や資産価値の保持にも活用されています。
1USDTが1ドルの価値を維持することを目指しており、仮想通貨市場のボラティリティーを抑える役割を果たしています。
②:USD Coin(USDC)
USD Coin(USDC)はCircle社が管理する法定通貨担保型のステーブルコインです。透明性が高く、規制遵守を重視しているのが特徴です。USD Coinは仮想通貨取引所での取引、送金、そしてDeFiアプリケーションへの参加など、幅広い用途で使用されています。日本ではSBIやコインチェックとの提携により、近い将来国内での利用が期待されています。
③:DAI
DAIはMakerDAOが運営する、複数の仮想通貨を担保とする分散型ステーブルコインです。スマートコントラクトを利用して価値を維持する仕組みが特徴で、中央集権的な管理者を必要としません。
DAIは主にDeFiエコシステム内での貸借や取引の安定化に使用され、市場のボラティリティーに対するヘッジ手段としても機能します。また日本国内の主要取引所で購入できるステーブルコインとなっています。
The Sandboxというメタバース系NFTゲームでは、DAIを使ってゲーム内の土地(LAND)やアイテムを購入できます。DAIの安定した価値により、NFTゲーム内資産の価値評価がしやすくなっています。
④:JPYC
JPYCは日本円に連動したステーブルコインで、JPYC株式会社が発行しています。日本の規制に準拠しており、日常的な取引での価格安定性を提供することを目指しています。物品の購入や電子決済手段として、特にブロックチェーン技術を用いた決済や取引に利用されています。
⑤:Binance USD(BUSD)
Binance USD(BUSD)はPaxos Trust Companyが発行し、Binanceが支援する法定通貨担保型のステーブルコインです。ニューヨーク州金融サービス局の規制下にあり、1BUSDが1ドルの価値を維持することを目指しています。仮想通貨取引所での取引、市場のボラティリティーに対するヘッジ、DeFiアプリケーションでの利用など、幅広い用途で使用されています。
⑥:Pax Dollar(PAX)
Pax DollarもPaxos Trust Companyが発行する、ドルを担保とするステーブルコインです。規制に準拠し、安定した価値交換手段を提供することを目的としています。主に国際取引の促進や商取引の安定した媒介として使用されています。
⑦:ジパングコイン(ZPG)
ZPGは三井物産デジタルコモディティーズが発行する、金(ゴールド)を担保とする日本産ステーブルコインです。1ZPGが金1グラムの価値と同等になるよう設計されています。
法定通貨のインフレリスクをヘッジする手段としても注目されていますが、金価格の変動リスクがあるため、他のステーブルコインとは異なる安定性の特徴を持っています。
ステーブルコインの将来性について
最後に、国内外を取り巻くステーブルコインの状況とこれからの将来性についてまとめます。
規制環境の整備と普及の加速
2024年以降ステーブルコイン市場は大きく拡大すると予想されています。その背景には各国での法整備の進展があります。日本でも2023年6月に資金決済法が改正され、信託型ステーブルコインの発行が可能になりました。
規制環境の整備によりステーブルコインの信頼性と透明性が高まり、より一層の普及が期待されています。
Web3エコシステムにおける中心的役割
ステーブルコインは、Web3エコシステムにおいて重要な役割を果たしています。特にDeFiでの利用が多く、安定した価値を持つ通貨としての機能を提供しています。またDAO(分散型自律組織)やNFT市場などWeb3の様々な分野でも活用されています。NFTでの活用の具体例として、JPYCが「ふるさと納税NFT」に導入され、住民税の納付にも利用されることが提案されています。
参考:日本円ステーブルコインのJPYC|「ふるさと納税NFT」を提供する株式会社あるやうむと資本業務提携
実体経済への統合と新たな可能性
ステーブルコインはWeb3の世界だけでなく、実体経済においても活用の可能性が広がっています。例えば日本の大手銀行3行(三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行)が支援する「プロジェクト・パックス」は、ステーブルコインを使用して国境を越えた取引を効率化することを目指しています。
このプロジェクトは、182兆ドル規模の国際クロスボーダー決済市場の非効率性に対処することを目的としており、高速でコストパフォーマンスに優れた24時間体制の国際送金の実現を目指しています。
参考:クロスボーダーステーブルコイン送金基盤構築プロジェクト「Project Pax」の始動および国内外金融機関との実証実験の開始について
まとめ
今回の記事ではステーブルコインとは何か、その種類や関連銘柄、今後の展望について解説してきました。ボラティリティーが激しく過去1000倍仮想通貨になったビットコインに比べて、ステーブルコインは価値が安定しているため決済手段として使いやすい特徴があります。
逆に仮想通貨のプレセールのように、大きな価格上昇を見込んだ投資には向かない点も認識しておく必要があります。ステーブルコインは、今後法整備が進むに連れ日本国内での流通も増えると見られており、今後の動向に注目です。