ステーブルコインのテザー(USDT)が、ベネズエラの経済活動に深く浸透している。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、米国の経済制裁を回避する手段として、国営石油会社PDVSAが原油輸出代金の受け取りにUSDTを利用しているという。
従来の国際銀行網へのアクセスが制限される中、USDTは同国にとって重要な資金決済・調達手段となっている。
経済学者の試算では、ベネズエラの石油販売の約8割がUSDTで決済されている可能性がある。
現地企業は石油取引で得たUSDTを通じて国内外の取引先への支払いを行っており、制裁下でも貿易を継続するための仕組みが構築されつつある。
市民生活に根付くバイナンス・ドル
一方、一般市民の間でもUSDTの利用が急速に広がっていると、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。
過去10年間で自国通貨ボリバルの価値が99.8%以上失われるハイパーインフレに見舞われたためだ。市民は資産を守るため、また日常の決済手段としてUSDTを積極的に選好している。
現地ではUSDTが「バイナンス・ドル」と呼ばれ、食料品の購入からマンションの管理費、給与の支払いに至るまで幅広く使われているという。
かつて政府はステーブルコインを自国通貨への脅威と見なして禁止していたが、制裁による経済的打撃を受けて方針を転換した。
現在は、為替管理の新たな手段として事実上容認している模様だ。政府高官も、ボリバルの為替レートを管理するために非伝統的なメカニズムを導入したことを認めている。
こうした背景から、ベネズエラは世界でも有数の仮想通貨投資が盛んな地域となっている。
テザー社の対応と規制の動き
こうした状況に対し、USDTを発行するテザー社は、米国および国際的な制裁を厳格に遵守していると説明している。
必要に応じて当局と協力し、不正活動に関連するウォレットを凍結する措置を講じているという。
実際、2024年には不正に関連する41のウォレットを凍結したとの報告もある。
米当局も監視を強めている。司法省は過去にUSDTを用いた石油密輸に関与した人物を起訴しており、議会ではステーブルコイン発行者を規制する法案の審議が進んでいる。
また、ベネズエラ政府が ビットコインやUSDTで600億ドル規模の「影の準備金」を蓄積しているとの指摘もある。
専門家は、マドゥロ大統領の逮捕による政治的な混乱があっても、USDTの利用は続くと予測している。
すでに経済インフラの一部として深く組み込まれており、政府と市民双方にとって不可欠なツールとなっているためだ。
