大手暗号資産(仮想通貨)ハードウェアウォレット企業のレジャーは23日、新たなマルチシグアプリケーションを公表した。
セキュリティ強化を掲げた技術的進化として位置付けられたが、導入された手数料体系が仮想通貨コミュニティから激しい批判を浴びている。
同社が公開した新サービスは、複数の署名を必要とするマルチシグウォレット機能を統合ダッシュボードで管理できるもので、企業や個人の資産管理を強化する狙いがある。
しかし、1回の取引につき10ドルの固定手数料と、トークン送金時には0.05%の変動手数料が課される仕組みとなっており、これが物議を醸している。
これらの手数料は、ブロックチェーンネットワークのガス代とは別に徴収される。
CEO発言の混乱が信頼性を損なう
レジャーのチャールズ・ギルメCEOはマルチシグ機能の公開前、ソーシャルメディア上で新サービスを無料と説明していた。しかし、公開後にこれを誤記として訂正し、有料モデルであることを明らかにした。この発言の食い違いにより、ユーザーの間で混乱と不信感が広がっている。
一方、イーサリアム(ETH)のpcaversaccio開発者は、「レジャーはサイファーパンクを装いながら、すべての仮想通貨を自社ウォレットという単一障害点に集約し、利用者から搾取しようとしている」と批判。
分散型管理を重視する仮想通貨コミュニティとレジャーの方向性の乖離が、改めて浮き彫りとなった。
競合との比較で際立つ課金姿勢
レジャーの手数料導入は、競合他社との対比でより際立つ。セーフ(旧グノーシスセーフ)などの既存マルチシグサービスは、標準的なガス代のみで利用可能だ。
世界の仮想通貨保管市場で約20%のシェアを持ち、750万台以上のハードウェアウォレットを販売してきたレジャーだけに、今回の政策転換は業界全体への影響が懸念されている。
セキュリティ専門家は、マルチシグ導入自体は個人や機関投資家の資産保護を強化すると評価する一方、手数料化がプライバシー重視のユーザーを遠ざけるリスクを警告している。
定期的な手数料負担を嫌うユーザーが、セキュリティの低い代替手段に流れる可能性も指摘されている。実際、発表後72時間でウォレットコネクトのマルチシグ統合が22%急増したとの報告もある。
ユーザーはよりコストが低く、信頼できる仮想通貨ウォレットを求めている傾向が見受けられる。
収益化戦略の背景と市場反応
レジャーの公式資料によれば、新アプリは分散型自律組織(DAO)や企業の資産管理を主な対象としており、従来のマルチシグソリューションと比較して取引署名時の人的ミスを47%削減できるという。
しかし、アナリストの試算では、月間25万件の取引が必要で、これはレジャーのアクティブユーザーベースの約3.3%に相当する。
手数料ベースのアクセスが公式インターフェースの回避を招き、フィッシング詐欺の脆弱性を高める可能性も研究者から指摘されている。
レジャーは10月25日時点で手数料体系の見直しを発表しておらず、「持続可能なインフラ投資」と位置付ける更新文書をユーザーに提示するにとどまっている。
フランス金融市場庁の審査を経た手数料構造だが、コンプライアンス上の異議は公表されていない。
今回の論争は、仮想通貨業界における理念と収益化のバランスという根本的な課題を浮き彫りにした。分散型自己管理を掲げてきた企業が、セキュリティ機能の有料化に踏み切ったことで、コミュニティとの信頼関係が試される局面を迎えている。
