インドの税務当局は11日、大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスを利用していた400人以上の富裕層トレーダーを対象に、脱税の疑いで大規模な調査を開始した。
中央直接税委員会(CBDT)は、調査対象者が2022年度から2024年度にかけて仮想通貨取引で得た利益を適切に申告しなかった疑いがあると見ており、国内の各地方事務所に対し、17日までに調査の進捗状況を報告するよう内部指令を出した。
バイナンス登録義務化が暴くインド富裕層の租税実態
この大規模調査は、バイナンスが資金洗浄防止法違反に対する225万ドル(約3億4,400万円)の罰金を支払い、2024年8月にインドの金融情報機関(FIU)へ「報告事業者」として登録したことで大きく進展した。
バイナンスは2023年後半、インド規制当局から適切な登録なしに違法に運営していると指摘され、国内での事業がブロックされていた。
FIUへの登録により、同社は取引データを当局に報告する義務を負い、これまで不透明だった海外取引の追跡が可能になった。
今回の調査の背景には、インドの厳格な仮想通貨税制が存在する。
インドのトレーダーには、全ての取引に1%の源泉徴収税(TDS)が課されるほか、利益に対して30%の仮想通貨税が課税される。
高所得者層の場合、追加のサーチャージや4%の教育目的税を合わせると、実効税率は約42.7%に達することもあり、この高い税負担が一部の富裕層トレーダーにバイナンスのような海外プラットフォームを利用した租税回避を促したと見られている。
インドの厳格な税制と法執行強化戦略
当局は、トレーダーが米ドル連動のステーブルコインであるUSDTを購入し、ブロックチェーンネットワーク経由でバイナンスウォレットに送金、その後ビットコイン(BTC)などの他の仮想通貨に交換しながら、これらの取引を申告しなかった手口を調べている。
税務専門家によると、所得税当局は所得申告を検証するために召喚状を発行する権限を持ち、違反した納税者は基本税額以上の追徴課税に直面する可能性がある。
インド政府は独自のデジタルルピー開発を進める一方で、暗号資産に対する法執行を強化しており、今回の調査もその一環として位置付けられる。
これまで、規制当局の管轄外で運営されていた海外取引所の利用は、租税回避の手段として利用されてきた。
しかし、バイナンスのFIU登録とそれに伴うデータ開示義務の発生により、当局は過去の取引記録まで遡って追跡することが可能になり、富裕層トレーダーの脱税に対する取り締まりが本格化している。
