イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏は19日、ブエノスアイレスで開催された開発者会議「Devconnect」にて、大手機関投資家によるイーサリアム(ETH)の保有拡大に対する懸念を表明した。
機関投資家の影響力と技術的なリスク
ブテリン氏は講演の中で、世界最大の資産運用会社であるブラックロック(BlackRock)などを念頭に、特定の大規模な主体がETHを大量に保有し続けることで生じる2つの存続リスクを指摘した。
第一の懸念は、イーサリアムの精神的支柱である分散性を重視する開発者たちが排除される可能性だ。
機関投資家の支配力が強まれば、コミュニティの理念が希薄化し、本来の目的から逸脱する恐れがある。
同氏は、金融機関の資金流入が正当性をもたらす一方で、ネットワークを「ウォール街のインセンティブ」に合わせて作り変えてしまうリスクがあると語った。
第二の懸念は、技術的な仕様変更への圧力だ。具体的には、ブロック生成時間を現在の数秒から約150ミリ秒へと極端に短縮する案などが挙げられる。
こうした変更は高頻度取引を行う機関投資家には有利だが、一般ユーザーにとってはノード運営に必要なリソースが膨大になり、事実上不可能となる。
その結果、ノードの運営者が一部のデータセンターや地域に集中し、ネットワークの地理的・構造的な中央集権化が加速することになる。
「ウォール街向けに最適化されたイーサリアムは、ウォール街しか使えないものになる」とブテリン氏は警鐘を鳴らした。
これは、透明性と公平性を目指す分散型取引所の理念とは相容れないものである。
ベースレイヤーの固定化と今後の方向性
現在、ブラックロックなどのウォール街の機関は合計で180億ドル(約2兆8400億円)以上のETHを保有しているとされる。
さらに、ブラックロックはデラウェア州で新たなステーキング機能付きETFの登録を行うなど、その関与は拡大の一途をたどっている。
機関投資家の保有比率が総供給量の10%を超えると予測される中、ブテリン氏の発言は市場への強いメッセージとなった。
こうした圧力に対抗するため、ブテリン氏はイーサリアムの基盤となるレイヤー1(ベースレイヤー)の「固定化(ossification)」を提唱している。
基盤部分の仕様をあえて変更困難にすることで、外部からの不安定な変更要求を拒む防壁とする考えだ。
同氏は、スケーラビリティやプライバシー機能などの革新は、レイヤー2(L2)ソリューション上で進めるべきだと強調した。
L2であれば、機関投資家のニーズに対応しつつも、基盤となるL1のセキュリティと分散性を維持することが可能になるからだ。
ブテリン氏は、イーサリアムが長期的な健全性を保つためには、目先の企業利用の利便性よりも、ネットワークの強靭性を優先する必要があると結論付けた。
今回の提言は、仮想通貨投資における分散性の重要性を改めて浮き彫りにした形だ。
