テザー(USDT)発行元のテザー・インベストメンツは10日、カナダの金ロイヤリティ企業エレメンタル・アルタス・ロイヤリティーズ株式を7842万1780株購入した。
これにより、同社は資産運用の多角化を本格的に推進する狙いだ。
テザー、金市場への戦略的投資
今回取得した普通株式7842万1780株は、発行済株式の31.9%に相当し、総額は約8940万カナダドル(約94億円)となる。1株あたりの価格は1.55カナダドルであった。
今回の取引により、テザー社はエレメンタル社の主要株主となった。株式は既存の大株主であるラ・マンチャ・インベストメンツから取得された。
同社は暗号資産(仮想通貨)市場で大きな影響力を有しており、今回の動きは伝統的資産へのポートフォリオ拡大を図る重要な一歩といえる。
金とビットコインを融合する金融インフラへ
テザー社は今回の株式取得に加え、追加購入のオプション契約も締結した。2025年10月29日以降、アルファストリーム・リミテッドが保有する最大3444万4580株を追加で購入できる権利が与えられている。
これにより、オプションが完全に行使された場合、持ち株比率は47.7%に高まる見通しである。
テザーのパオロ・アルドイーノCEOは、価値保存手段としての金とビットコイン(BTC)を自社エコシステムに組み込む戦略を強調した。金は歴史的にヘッジ資産として評価されており、今回の投資はデジタル金融商品の安定性向上を狙うものだ。
エレメンタル社は7カ国に所在する12か所の鉱山からロイヤリティ収入を得ている。これにより、テザー社は採掘事業の運営リスクを負うことなく世界各地の金生産から収益を享受できる。
同社は金融インフレ対策およびデジタル経済の成長基盤確保のため、金へのエクスポージャーを強化する狙いがある。また、この戦略はデジタル資産のボラティリティを考慮した仮想通貨長期保有の視点からも注目される。