マーシャル諸島、ステラ活用のベーシックインカム全国配布を完了

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海上の光の道を進むデジタルドルコインとマーシャル諸島のシルエット

マーシャル諸島共和国政府は16日、同国初となるブロックチェーン技術を活用したユニバーサルベーシックインカム(UBI)の全国配布を完了した。

今回の取り組みは、同国の社会保障プログラムであるENRAの一環として実施され、ブロックチェーンを用いたUBI配布としては世界初の試みとなる。

配布にはUSDM1と呼ばれるデジタルネイティブなソブリン債が使用され、米ドル建てで発行されるとともに、短期米国債によって完全に裏付けられている。

従来、同国は広大な海域に多数の島々が点在する地理的制約から、現金給付の物理的輸送が困難であり、物流コストも高額となっていた。

しかし今回のデジタル化により、市民は専用のデジタルウォレット「Lomalo」を通じて、迅速かつ安全に資金を受け取ることが可能となった。

地理的課題と金融インフラの刷新

ステラ開発財団(SDF)の発表によると、マーシャル諸島はコルレス銀行システムのサービスが十分に行き届いていない地域であり、代替となる金融インフラの構築が急務となっていた。

従来、現金を船で運ぶという非効率な方法に頼ってきた同国では、物流や管理のコストが大きな課題となっており、これを解決する手段としてブロックチェーン技術の導入が決定された。

ブロックチェーンは、データを分散管理することで改ざんを防ぎ、高い透明性を実現できる技術であり、全国規模の給付システム構築に適している。

今回のプロジェクトでは、市民が使用するデジタルウォレットLomaloが導入され、デジタルリテラシーの差を考慮して簡便さを重視した設計が施されている。

Lomaloは市民への資金配布に特化した仮想通貨ウォレットとなっており、ブロックチェーンを活用した福祉分配システムとして実際に機能している点で画期的だ。

同ネットワークのネイティブ通貨であるステラルーメン(XLM)は、送金手数料の低さでも知られており、全国規模の給付に適した基盤となっている。

SDFのデネル・ディクソンCEOは、「ブロックチェーンを活用した全国規模のUBI提供は、ステラネットワークが目指してきた理想そのものだ」と述べ、プロジェクトへの期待を示した。

SDFは技術的基盤の構築支援として、数百万ドル規模の助成金を提供し、実現に向けた資金面のバックアップも行っている。

今回の取り組みは、理論的な応用にとどまらず、政府による実際の福祉分配システムとして運用される点で、国際的にも注目される先進的事例となった。

法的枠組みと通貨主権の維持

今回のUBI配布に使用されたUSDM1は、ニューヨーク州法に基づき、新興国市場で伝統的に用いられるブレイディ債の構造を採用して発行されている。

各ユニットは常に米国債によって裏付けられ、法的に分別管理される仕組みとなっており、さらに独立した受託者構造を導入することで、政府や民間発行者が担保の取り決めを一方的に変更できないよう透明性が確保されている。

一方、国際通貨基金(IMF)は以前、USDM1のようなデジタル金融媒体が、期待されるリターンに見合わないリスクをもたらす可能性があると警告していた。

これに対し、マーシャル諸島政府は、今回のプログラムは「通貨イニシアチブではなく、財政配布プログラム」であり、既存の通貨システムを置き換えるものではないと強調。

USDM1はあくまで補完的な財政ツールとして運用され、通貨主権への懸念に配慮した設計であることを明確にしている。

今回のイニシアチブは、バハマの「サンドダラー」やカンボジアの「バコン」といった他国のデジタル通貨実験と並ぶ取り組みであるが、福祉分配に特化している点で独自性を持つ。

政府は、USDM1が国の金融・技術的主権を侵害するものではないと説明しており、デジタル技術を活用した新たな国家戦略として国際的にも注目を集めている。

著者: 松田 明日香

暗号資産投資を2020年に始め、ビットコインやNFT、DeFiなど複数の分野で投資経験を有する。2025年1月にICOBenchに参加し、専門的な暗号資産ライティングを手掛けている。