韓国のIT大手ネイバーは27日、暗号資産取引所アップビットを運営するドゥナムとの経営統合に向けた協議を進めていると発表した。
複数の情報筋によると、今回の統合はネイバーの金融子会社であるネイバーフィナンシャルを通じて行われる見通しだ。
両社は株式交換による提携を検討しており、その評価額は約103億ドル(約1兆6068億円)に達すると報じられている。
この取引が成立すれば、韓国のテクノロジー業界と仮想通貨業界における最大級の再編となる。
統合後の新会社では、ドゥナムのソン・チヒョン会長が約28%の株式を保有し、筆頭株主となる予定だ。
一方、現在ネイバーフィナンシャルの70%を保有しているネイバーは、持分が希薄化され約17%の第2位株主となる見込みである。
両社は法的拘束力のある合意には至っていないものの、具体的な協力関係の構築に向けて議論を重ねている。
次世代スーパーアプリとステーブルコイン構想
今回の統合における最大の目的は、人工知能(AI)、検索機能、デジタル決済、そしてブロックチェーン技術を高度に融合させた「スーパーアプリ」の構築にある。
ネイバーフィナンシャルは年間約80兆ウォン(約9兆円)に上る決済処理能力を有しており、世界4位の取引量を誇るアップビットの顧客基盤と組み合わせることで、強力なシナジー効果を生み出す狙いだ。
特に市場の注目を集めているのが、韓国ウォンに連動したステーブルコインの発行計画である。
アナリストらは、この合併によってトークン化された証券やWeb3金融商品の開発が加速すると予測している。
未来アセット証券の試算によると、両社によるウォン建てステーブルコイン事業が実現した場合、2030年までに年間3000億ウォン(約340億円)規模の収益を生み出す可能性があるという。
こうした事業展開は、ビットコインなどの主要な暗号資産取引の活性化にも寄与するだろう。
ネイバーフィナンシャルはすでに、ブロックチェーン企業のHashedやBDANと提携し、ステーブルコイン用ウォレットの開発に着手している。
釜山市の地域通貨「冬柏銭(トンベクジョン)」での技術試験運用も進められており、月間150万人のユーザーを対象とした実証実験が行われている。
こうした既存の取り組みが、統合後の新サービス展開を後押しするとみられる。
規制環境の変化と市場への影響
今回の協議は、韓国政府が仮想通貨規制の枠組みを整備し、ウォン建てステーブルコインの法制化を進める中で行われている。
アップビットは韓国国内で一時80%以上の市場シェアを記録するなど圧倒的な地位にあるが、その独占状態は規制当局や議員から独占禁止法上の懸念を招いていた。
ネイバーとの統合は、こうした規制リスクに対応しつつ、事業基盤を多角化する戦略の一環とも解釈できる。加えて、有望なアルトコインの発掘や上場支援体制の強化も視野に入れているようだ。
また、この提携は競合であるカカオや既存の伝統的銀行に対する競争力を高める重要な一手となる。
業界関係者によると、株式交換の比率はドゥナム対ネイバーフィナンシャルで1対3から1対4の範囲になると推定されている。
これはドゥナムの企業価値を約15兆ウォン、ネイバーフィナンシャルを約5兆ウォンと評価した計算だ。
今後のプロセスとして、両社はそれぞれの取締役会での承認を経た後、株主総会での正式決定を行う必要がある。
ネイバー創業者のイ・ヘジン氏とドゥナムのソン会長による共同会見も計画されており、イ氏にとっては約9年ぶりの公の場となる予定だ。
両トップが語る戦略的ビジョンに、市場関係者の関心が集まっている。
