米暗号資産(仮想通貨)取引所大手コインベースのデビッド・デュオン投資調査責任者は5日、量子コンピュータの技術進歩がビットコインの長期的なセキュリティに対する構造的なリスクになると警告した。
デュオン氏の分析によると、現在流通しているビットコインの約3分の1にあたる651万BTCが、量子コンピュータによる攻撃に対して脆弱な状態にあるという。
この脆弱性は、ブロックチェーン上で公開鍵が直接露出していることに起因する。特にアドレスの再利用や、古いタイプのスクリプトを使用している場合にリスクが高まる。
署名セキュリティへの懸念
ビットコインのセキュリティは、主に取引署名を保護する楕円曲線デジタル署名アルゴリズム(ECDSA)と、マイニングを支えるSHA-256ハッシュ関数に依存している。
デュオン氏は、量子コンピュータが公開鍵から秘密鍵を逆算し、脆弱なアドレスから資金を流出させる可能性があると指摘した。
量子技術はまだ実験段階にあるものの、脅威は理論的なものから現実的な構造的リスクへと変化しつつある。
こうした技術的課題は、ビットコインの将来的な価値にも影響を及ぼす可能性がある。
市場はこのリスクを十分に価格に反映していないとデュオン氏は分析する。マイニングへの影響よりも、署名のセキュリティが破られることの方が差し迫った懸念事項だ。
量子マイニングについては、現在のスケーリングの制約から優先度は低いとされる。
攻撃者が公開鍵を特定できれば、正当な所有者になりすまして資産を移動させることが可能になるからだ。
投資家は、こうしたリスクを回避するためにビットコインウォレットの管理方法を再考する必要があるかもしれない。
市場の認識と対策の必要性
機関投資家の間でも、この問題に対する認識は高まりつつある。
資産運用最大手のブラックロックは2025年5月、ビットコイン現物ETF「iShares Bitcoin Trust」の目論見書を修正し、量子コンピュータをリスク要因として明記した。
デュオン氏は、市場参加者が量子技術のリスクを以前よりも身近なものとして捉え始めていると述べる。
また、ビットコインetfの普及により、機関投資家の参入が加速していることも背景にある。
対策として量子耐性のある暗号技術へ移行するには、エコシステム全体の調整が不可欠だ。
ウォレットプロバイダー、取引所、マイナー、カストディアンなど、多岐にわたる参加者の合意形成が必要となる。
デュオン氏は、実際に量子コンピュータが暗号を解読できるようになる日が到来するずっと前に、移行計画を進める必要があると強調した。
短期的な攻撃の確率は低いものの、影響を受ける可能性のある資産規模は数千億ドル(数十兆円)に上るため、事前の対策が重要となる。
