仮想通貨保有者への物理的攻撃が急増、2025年は過去最悪のペース

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暗い部屋のテーブルに置かれた仮想通貨ウォレット画面を表示したスマートフォンと、背後の侵入者の影

セキュリティ企業の幹部ジェイムソン・ロップ氏はこのほど、暗号資産(仮想通貨)保有者を標的とした物理的な攻撃に関する衝撃的なデータを公開した。

ロップ氏が管理するデータベースによると、暴力や脅迫を用いて秘密鍵やウォレットの認証情報を奪う事件が2025年に入り激増している。

2023年には世界で18件、2024年には24件だった報告数が、2025年は半ばの時点ですでに50件を超えた。これは前年の合計の約2倍に相当する数字だ。

ブロックチェーン分析企業チェイナリシスの報告でも、この傾向は裏付けられている。

一部の分析では前年比で169%の増加を示しており、こうした攻撃はもはや理論上の懸念ではなく、頻繁に発生する現実的な脅威となった。

かつては年に数回程度だった発生頻度が、現在では週単位で確認されているという。

深刻化する暴力と手口の巧妙化

被害の内容も極めて深刻だ。2025年1月には、ハードウェアウォレット製造大手Ledger(レジャー)の共同創設者デビッド・バランド氏がフランスで誘拐され、身代金要求の過程で指を切断されるという凄惨な事件が発生した。

また3月には、人気配信者のアモウランス氏が約31億円(2000万ドル)相当のビットコイン残高を公開した直後に、武装した強盗団による住居侵入の被害に遭っている。

攻撃の手口は、ソーシャルエンジニアリングと物理的な暴力を組み合わせたものへと進化している。サンフランシスコでは、宅配業者を装った犯人が被害者を拘束し、約17億円(1100万ドル)相当の仮想通貨を奪う事件も起きた。

犯人は事前に被害者の保有資産と住所を特定しており、ブロックチェーンの透明性と個人情報の流出が、標的の特定を容易にしている現状がある。

「自己管理」の原則に突きつけられた課題

仮想通貨業界では長年、「鍵を持たぬ者はコインを持たず(Not your keys, not your coins)」という自己管理の原則が推奨されてきた。

しかし、取引所のような引き出し制限や不正監視システムがない個人のウォレットは、一度物理的に制圧されれば資産をすべて失うリスクがある。

徹底したオフライン管理ができるコールドウォレットであっても、所有者自身が脅されれば防ぎようがない。この「単一障害点」が、犯罪者にとって格好の標的となっているのだ。

こうした状況を受け、脅迫された際に少額のみが入った「パニックウォレット」を差し出す対策や、物理的盗難に特化した保険商品への関心が高まっている。

資産の主権を維持する自己管理が、生命の危険という代償に見合うものなのか、コミュニティは難しい問いに直面している。

リスクを正しく理解し対策を講じることが、長期的な仮想通貨投資において不可欠となるだろう。

著者: 峯 竜也

暗号資産とブロックチェーン技術に特化したジャーナリスト。業界の最新動向や市場分析を発信。技術的な深掘りから初心者向けガイドまで、幅広い読者に向けたコンテンツ制作を得意とする。