大手決済ネットワークのVisa(ビザ)とMastercard(マスターカード)は2日、ステーブルコインの利用規模は現時点でごく僅かにとどまり、自社の優位性を脅かすものではないとの見解を示した。
両社は最新の決算説明会で、ステーブルコインが主に暗号資産(仮想通貨)の取引に用いられており、決済市場への影響は限定的であると強調した。
ステーブルコイン利用の現状と限定的な影響
マスターカードのジョーン・ランバート最高製品責任者によると、ステーブルコイン取引量の90%は、ビットコイン(BTC)など他の仮想通貨を購入するために使われており、広範な決済手段としての実用化には至っていない。
ビザもこの見解に同調している。同社の2025年第2四半期におけるステーブルコインの決済処理額は2億ドルを超えたが、年間決済総額15兆ドルと比較すると、わずかな割合にとどまっている。
一方、市場全体ではステーブルコインの取引量が前四半期比で9.5%増加しており、一定の成長傾向が見られる。
それでも両者は、こうした資産は法定通貨が不安定な国々において有用性が高いとし、主要市場での普及には慎重な姿勢を崩していない。
規制と戦略的取り組み
米国では最近、ステーブルコインの規制枠組みを定めるGENIUS法案が可決され、市場の透明性が向上した。この動きを受け、機関投資家の関心が高まりつつある。
ビザとマスターカードも、ステーブルコインを既存ネットワークの補完技術と位置づけ、慎重に統合を進めている。
ビザは国境を越えた送金など、低コストで効率的な決済手段としての利用を模索しており、ステラやアバランチといったブロックチェーンネットワークとの提携を拡大した。
また、ペイパルのPYUSDもサポート対象に加えた。
一方、マスターカードは送金やB2B決済分野における試験運用に注力している。同社は、ステーブルコインがカードネットワークに与える短期的な影響について、過大評価すべきではないと指摘する。
JPモルガンやShopifyがステーブルコイン市場に参入する中、ビザとマスターカードは、長年にわたって構築してきた信頼と広大なネットワークを武器に、競争上の優位を維持できるとの認識を示している。