イーサリアム(ETH)の時価総額は6日、前日比-0.9%安を記録し、約2157億ドルで推移している。
また、イーサリアム基盤の分散型取引所(DEX)における預かり資産総額(TVL)が、過去のピーク時から大幅に減少している。
DEXのTVL急落、市場全体の低迷が影響
イーサリアムのDEXにおけるTVLは、2021年11月に記録したピーク時の440億ドル(約6兆3360億円)から大きく落ち込み、最近の報告では約50億ドル(約7200億円)となっている。
これは、ピーク時から約88%から90%の減少を意味する。
このTVLの急落は、2025年第1四半期に見られた広範な暗号資産(仮想通貨)市場の低迷と連動している。
同四半期には、複数のブロックチェーンにまたがる分散型金融(DeFi)全体のTVLが489億ドル(約7兆416億円)、率にして27.5%減少した。
特にイーサリアム(ETH)は影響が大きく、TVLは同期間に1126億ドル(約16兆2144億円)から727億ドル(約10兆4688億円)へと35.4%減少した。
さらに、イーサリアム上のDEXにおける取引量も大幅に落ち込んでいる。
2025年3月には、週間の取引量が34%減少した。マーベリック・プロトコル(Maverick Protocol)で85%減、DODOプロトコルで46%減など、個別のプロトコルではさらに深刻な減少が見られた。
イーサリアムエコシステムの構造変化
一方で、DEXの不振とは対照的に、イーサリアムのレイヤー1(L1)エコシステム全体のTVLは2000億ドル(約28.8兆億円)を超え、依然として高い水準を維持している。
これは主に、ステーブルコインの成長によるものが大きい。
ステーブルコインは現在、イーサリアムL1のTVLの約65%を占め、その総額は1300億ドル(約18兆7200億円)に達し、2022年のピーク時(1220億ドル)を上回っている。
ステーブルコイン以外にも、レンディングプロトコル(仮想通貨の貸し借り)、実物資産(RWA)、リキッドステーキング(ステーキング資産の流動化)といった分野がイーサリアムエコ全体のTVLを支えている。
これらの分野の成長は、イーサリアムの用途が変化している可能性を示唆する。
かつては個人投資家中心のDEXがエコシステムを牽引していたが、現在では機関投資家向けの金融商品としての側面が強まっているのかもしれない。
競合ブロックチェーンの台頭も、イーサリアムDEXからの資金流出要因となっている。
バイナンスチェーン(BNB Chain)ではDEXの週間取引量が27%増加し、新興のベラチェーン(Berachain)は2025年第1四半期末までに52億ドル(約7488億円)のTVLを集めた。
また、バイナンスチェーン上のDEXのパンケーキスワップ(PancakeSwap)が、イーサリアム基盤のユニスワップ(Uniswap)よりも多くの手数料を生み出す状況も生まれている。
これもイーサリアムの取引需要を低下させる一因となっている。
イーサリアムのレイヤー2であるベース(Base)、アービトラム(Arbitrum)、ポリゴン(Polygon)などでも、DEX取引量の減少傾向が見られ、エコシステム全体の手数料収入による需要を弱めている。
これらの状況を総合すると、イーサリアムDEXのTVL減少は顕著であるものの、エコシステム全体としては成長が進んでいる。
具体的には、ステーブルコインやRWA、リキッドステーキングといった分野が成長しており、構成要素の変化が進んでいると言える。
このようにイーサリアムエコシステムが変容しつつも成長を続ける現状は、今後のポテンシャルを測る上で非常に重要だ。そのため、イーサリアムの今後に注視していく必要がある。
このような状況下では、将来性のある新しい仮想通貨への注目も集まりやすい。