イーサリアム創設者、WorldのIDシステムに警鐘|匿名性の侵害

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中央集権的なデジタルIDシステムのリスクを象徴する、警告マークの付いたネットワークと匿名の人物像

イーサリアム(ETH)のヴィタリック・ブテリン共同創設者は29日、OpenAIのサム・アルトマンCEOが支援するデジタルIDプロジェクトWorldが、オンラインの匿名性を脅かす可能性があると警告した

Worldは、Orbと呼ばれる生体認証装置でユーザーをスキャンし、固有のIDを割り当てる。

同プロジェクトはゼロ知識証明を用いることでプライバシーを保護すると主張しているが、ブテリン氏はこの点に疑問を呈している。

ゼロ知識証明の構造とプライバシーへの懸念

ブテリン氏によると、Worldの1人1IDというモデルは、たとえゼロ知識証明で保護されていても、ユーザーの全ての活動を単一の公開IDに紐付けてしまう危険性がある。

これは、オンラインにおける匿名性の根幹を揺るがすものだ。

ゼロ知識証明は生体認証データなどの個人情報を匿名化するが、Worldのモデルでは検証済みIDが単一の利用者に固定される。

これにより、複数の仮名アカウントを持つことができなくなる。このような中央集権的な仕組みは、分散型金融ソリューションとは対照的だ。

同氏は、プライバシー保護技術でさえ、IDの統合と結びつくと匿名性を侵害する可能性があると指摘する。

中央集権的な登録システムは、利用者に自己検閲を強いたり、強制的な圧力に晒したりするリスクをはらんでいる。

Worldはすでに1300万人以上の登録者を集めていると報告されているが、このアプローチが広く採用されれば、監視に適した硬直的なシステムが生まれる。

同氏が指摘するこれらの課題は、暗号資産(仮想通貨)市場で、ワールドコイン(WLD)が普及する上での大きな論点となっている。

多元的なIDシステムへの提言

ブテリン氏は解決策として、中央集権的な管理者なしに複数の独立したIDを管理できる、多元的なゼロ知識アイデンティティシステムを提唱している。

これは、彼が共同創設したイーサリアムが目指す分散型の世界観とも一致する。

このアプローチは、ゼロ知識証明による本人確認と、仮名で活動できる柔軟性の両立を目指すものだ。

同氏は、ゼロ知識証明が直接的なプライバシーリスクを軽減することは認めつつも、その実装方法によっては新たな脆弱性が生じると強調する。

WorldのOrbデバイスと生体認証に焦点を当てた手法は、このトレードオフを象徴している。

デジタルIDに関する議論とは直接関係ないが、米国の関税変動がアルトコイン市場に影響を与えるなど、このエコシステムは政策や技術の変化に敏感だ。

こうした背景も、代替となるIDモデルの採用に影響を与える。

著者: 早下 光

暗号資産ライター。2019年からの仮想通貨市場経験を基に、ブロックチェーン技術の基礎から応用、最新ニュースまで、正確・深い情報で読者の理解をサポートします。