イーサリアム(ETH)の創設者ヴィタリック・ブテリン氏は28日、人工知能(AI)と暗号資産(仮想通貨)技術の根本的な哲学的相違点を論じた記事を発表した。
人間の価値観に沿った技術開発の重要性を訴え、AIは人間によって導かれるべき「ツール」であると主張している。
ブテリン氏は記事の中で、AIと仮想通貨技術の対照的な特性に焦点を当てた。AIを「中央集権的かつ強力」な存在と位置づける一方、仮想通貨技術は「分散型で平等主義的」なアプローチを体現していると指摘している。
特にAIが人間の感情や思考をより多く共有することで、個人のプライバシーが失われるリスクについて警鐘を鳴らした。
AIと人間の関係性における懸念
ブテリン氏は、AIが人間から「意味ある主体性」を奪う危険性を強調した。彼はAIを「エンジン」、人間を「ハンドル」と例え、技術がどれほど発展しても、最終的な方向性は人間が決定すべきだと主張している。
「10年後にはChatGPTにすべての思考を伝え、完全な透明性を失うリスクがある」とブテリン氏は述べている。この懸念に対応するため、脳とコンピュータのインターフェース(BCI)の統合など、人間が意思決定プロセスに直接関与できる仕組みの構築を提案した。
分散型システムの重要性
ブテリン氏は、AI開発が少数の大企業に集中する現状に対し、ブロックチェーンに代表される分散型アーキテクチャの重要性を改めて強調した。
彼は「ピーター・ティールの異名法(仮想通貨=自由主義、AI=共産主義)」という視点を引用し、両技術の根本的な違いを説明している。
また、Soulbound Tokens(SBT)と呼ばれる非譲渡可能トークンを用いた本人認証システムの提案も、Web3の新たなパラダイムとしてブテリン氏の思想を体現していると評価されている。これは分散型の意思決定システムの一例として挙げられる。
プライバシーと規制のバランス
ブテリン氏はプライバシー保護と規制遵守のバランスについても言及した。特にイーサリアム(ETH)のスマートコントラクトベースの「プライバシープール」など、新たなプロトコルが両立の可能性を持つとしながらも、その実装には課題があると指摘している。
ブテリン氏はAIを「量子力学」や「生物学的生命」と比較しながら哲学的考察を深め、大規模言語モデル(LLM)の脆弱性についても言及した。
AIの進化が続く中で、技術開発が人間の価値観やニーズに沿ったものとなるよう、また権力の集中や制御不能のリスクを回避するための議論が今後も重要になると締めくくっている。