米国財務省と内国歳入庁(IRS)は10日、DeFiプロトコルに顧客の取引報告を義務付けるブローカー規則を正式に撤廃した。
この撤廃は何年にもわたる規制を巡る論争に終止符を打つものだ。これにより、DeFi業界の大きな懸念材料が取り除かれた。
規則の経緯と撤廃の背景
問題となった規則は、2021年のインフラ投資雇用法に端を発する。この法律は暗号資産(仮想通貨)ブローカーの定義を拡大し、DeFiの参加者も対象に含めた。
これにより、DEXなどのプラットフォームは、従来の証券会社と同様に顧客の取引詳細をIRSに報告する必要があった。
IRSは2024年12月にこの規則を最終決定した。DeFiプラットフォームに対し、顧客の氏名、住所、納税者番号などの個人情報を記載したフォーム1099-DAの提出を求めていた。
しかし、DeFiプロトコルは管理者不在で運営される非中央集権的な性質を持つ。そのため、顧客データを一元的に収集する仕組みがなく、規則の遵守は事実上不可能だと指摘されていた。
こうした状況を受け、2025年4月に米国議会が議会審査法に基づく決議を可決した。トランプ大統領が署名し、規則の法的根拠が失われた。
今回の財務省による発表は、この政治的決定を追認し、連邦規則集から当該規則を正式に削除する手続きとなる。
業界への影響と今後の展望
今回の決定は、法的な実行不可能性、超党派による政治的な反発、そして業界からの強い抵抗が複合的に作用した結果だ。
DeFiコミュニティは、この規則が技術革新を阻害し、プライバシーを侵害するだけでなく、中央集権型取引所と比較して不公平なコンプライアンス負担を強いるものだと批判してきた。
撤廃されたのは、DEXのような非中央集権型のプラットフォームを対象とする報告義務である。中央集権型の仮想通貨取引所は、引き続き既存の報告義務を負うことになる。
IRSは規則制定以前の税法に戻り、DeFiプロトコルが総収益や利用者情報を財務省に報告する必要はなくなった。
この規制緩和は、DeFi市場にとって大きな追い風となる可能性がある。専門家は、コンプライアンスリスクの低下により、機関投資家の関心が再び高まると分析している。
特に、多くの主要なDeFiプロトコルが稼働するイーサリアムなどのブロックチェーンにおいて、新たな資金流入が期待される。