米国上院は8日、ステーブルコイン(法定通貨など伝統的な資産と連動した仮想通貨)規制法案「GENIUS法案」の審議入りを、48対49で否決した。
本法案は、暗号資産(仮想通貨)の一種であるステーブルコインに法的な枠組みを設けることを目的としていたが、進展が一時的に停滞する形となった。
否決の背景と政治的な対立
ステーブルコイン規制法案「GENIUS法案」への反対は主に民主党から出た。消費者保護や金融システムの安定、国家安全保障に対する対策が不十分だとする意見が中心だった。
特に、ドナルド・トランプ米国大統領の家族が仮想通貨事業に関与していることによる利益相反の懸念が指摘された。
また、米国の大手IT企業が金融サービスに進出し、利用者の監視につながるリスクに法案が十分対応していない点も問題視された。
金融の安全を訴える市民団体からは「抜け穴だらけ」との批判も上がっている。
党派を越えた複雑な票の動き
投票は48対49となり、2人の共和党上院議員が反対に回ったことで、単純な与野党対立を超えた複雑な構図が浮き彫りになった。
上院多数党院内総務ジョン・スーン議員は、手続き上の理由で最終的に反対票を投じ、法案の再提出の余地を作った。
スーン議員は民主党側の「意図的な妨害」を批判したが、民主党は「法案の改革が不十分」として主張を譲らなかった。
仮想通貨業界と今後の見通し
本法案の否決は、仮想通貨業界にとって明確な規制の遅れを意味する。
業界内では、今後の関連法案や、ビットコイン(BTC)を含むデジタル資産全体の規制枠組みの進展に対する不透明さが広がっている。
一方、スーン議員の手続き的な対応によって、今後法案の修正や再提出が見込まれており、規制の行方は引き続き注目される。
また、新しい仮想通貨や既存の資産に対する社会的な議論も活発化している。今回の否決は、仮想通貨を巡る社会的な議論や政治的駆け引きが今後さらに激しさを増す可能性を示している。