米国のスコット・ベッセント財務長官は18日、ステーブルコイン市場が2030年末までに3兆7000億ドル(約536兆5000億円)に拡大する可能性があるとの見通しを示した。
これは、同日に上院で可決されたGENIUS Act(米国のステーブルコインに関する国家的イノベーションの指導と確立のための法律)が成立することを前提としている。
GENIUS Actの概要と目的
GENIUS Actは、ステーブルコイン発行者に対する規制を目的とした超党派の法案で、米国がデジタル金融領域における主導権を確立するための重要な一手とされている。
同法案の中核には、発行者が米ドルと1対1の価値を裏付ける準備金を保有する義務が盛り込まれている。この準備金は米国債など安全性の高い流動資産で構成され、発行には連邦準備制度理事会(FRB)と通貨監督庁(OCC)の承認が必要となる。
ベッセント財務長官は、準備金の保有義務や発行前の当局承認といった規制の枠組みがステーブルコインの信頼性を高め、機関投資家や国際的な利用者を引きつけるとの見方を示している。
ステーブルコインを含む暗号通貨(仮想通貨)市場の成長は、マクロ経済にも広がりを見せている。
市場への影響と経済戦略
ベッセント財務長官は当初、ステーブルコイン市場が2028年までに2兆ドルに達すると見込んでいたが、規制環境の整備を前提に、2030年までに3兆7000億ドルへの上方修正を行った。
この成長は、米国の経済戦略と密接に関係している。ステーブルコイン発行者による米国債への需要増加は、政府の借入コストを低減させ、財政赤字の拡大抑制にも寄与する見通しだ。
さらにGENIUS Actには、中国のデジタル人民元への対抗という側面もあり、米ドルの基軸通貨としての地位を維持する狙いがある。
一方、政策立案者と民間仮想通貨企業の利害関係に関する規定が欠如している点など、監督機能の不十分さを懸念する声もある。