米国銀行協会(ABA)を含む複数の金融団体は17日、通貨監督庁(OCC)に対し、暗号資産(仮想通貨)企業の銀行免許申請の承認を遅らせるよう求める書簡を提出した。
この要請は、サークル、リップル、フィデリティ・デジタル・アセットなどが申請している全国的な信託銀行免許に関するものだ。
これらの仮想通貨企業は、連邦政府の銀行免許を取得することで、州ごとの複雑なライセンス要件を回避し、決済の迅速化や米国内での事業拡大を目指している。
銀行団体が示す複数の懸念点
銀行団体が反対する主な理由は、政策および規制上のリスクにある。
資産管理や遺産計画といった伝統的な信託業務を義務付けずに免許を付与すれば、銀行以外の企業も同様の免許取得に動き、米国の金融システムが不安定化しかねないと指摘している。
また、公開されている申請情報には、事業モデルや運営に関する重要な詳細が欠落しており、利害関係者が内容を十分に評価できない点も問題視されている。申請の透明性不足は、公正な審査を妨げる要因となり得る。
さらに、銀行団体は仮想通貨の保管業務が従来の信託銀行業務と同等ではないと主張している。基準を緩和すれば、不公平な自己資本要件や規制の裁定取引につながる恐れがあると警鐘を鳴らした。
伝統金融と仮想通貨の対立が鮮明に
今回の動きは、規制上の正当性を求める仮想通貨企業と伝統的な金融機関との間の緊張の高まりを反映している。
最近では、ステーブルコインの枠組みを定める法案などの影響もあり、仮想通貨企業による銀行免許取得の動きが加速していた。
仮想通貨銀行の創設者であるケイトリン・ロング氏は、この対立が訴訟に発展する可能性があると警告している。同氏は、伝統的な銀行が規制を回避するために信託免許を利用することに懸念を示した。
仮に免許が承認されれば、仮想通貨企業は自ら決済仲介者として機能し、従来の銀行パートナーシップへの依存を減らすことが可能になる。
この問題は、技術革新とシステム全体の安全確保との間で、米国の金融規制が重要な岐路に立たされていることを浮き彫りにした。
特に、リップルのような大手企業による申請は、銀行免許制度のあり方そのものを問う動きと受け止められている。