米テキサス州で、特定の犯罪行為に関連するデジタル資産の没収を認める州法、SB1498が現地時間6月20日、自動的に成立した。新法は9月1日に施行される。
この法律は、法執行機関が没収したデジタル資産を、テキサス州司法長官または管轄する法執行機関が管理する安全なオフラインウォレットに保管するよう義務付けている。
新法の背景と主な内容
今回の法改正は、テキサス州刑事訴訟法第59.01条を修正するものである。これにより、暗号資産(仮想通貨)やNFT、ステーブルコインなどのデジタル資産が、特定の犯罪行為に関連する場合、禁制品に明示的に含まれるようになる。
法改正の背景には、詐欺や資金洗浄、麻薬取引、人身売買、証券法違反といった犯罪におけるデジタル資産の利用増加がある。新法の下では、法執行機関は刑事有罪判決がなくても、違法行為に関連するデジタル資産を差し押さえ、没収する権限を持つ。
没収された資産は、マルチシグネチャウォレットやハードウェアセキュリティモジュールといったコールドウォレットで管理される。これにより、不正アクセスや紛失から資産を保護する。没収された資産は最終的に売却され、収益は法執行機関の予算や被害者補償基金に充てられる。
法整備の経緯と課題
法案可決の背景には、既存の資産没収制度の不備があった。旧来の法律ではデジタル資産に関する規定が明確でなく、法執行機関がサイバー犯罪に対応するうえで課題となっていた。特にNFTのように、アートやゲームアイテムとして価値を持つ資産の所有権の扱いには、法的に曖昧な点が多かった。
当初は共和党主導の法案と見なされていたが、最終的には超党派の支持を得て可決された。法執行機関がデジタル資産を差し押さえ、安全に管理するための手続きの明確化が、党派を超えた合意形成につながったとみられる。
一方で、この法律は刑事有罪判決なしに資産を没収できるため、プライバシーや財産権の保護に関する懸念もある。9月からの施行は、テキサス州が新たなテクノロジーを活用した金融犯罪にどう対応していくかを示す試金石となる。