ステーブルコインUSDTの発行元であるテザー社は8日、ブロックチェーン分析企業のクリスタル・インテリジェンス社へ戦略的投資を行ったと明かした。
この投資は、ステーブルコインの不正利用に対抗し、セキュリティを強化する取り組みの一環である。
テザー社はクリスタル・インテリジェンス社のツールを活用し、リアルタイムのリスク監視や詐欺検出、規制遵守能力の向上を図る。
クリスタル・インテリジェンス社は、以前はBitfury社の子会社だったが、現在は独立して事業を展開している。
同社の提供するブロックチェーン分析ソリューションは、世界中の規制当局や法執行機関で利用されている。
仮想通貨詐欺の急増と法執行機関との連携
今回の提携強化の背景には、暗号資産(仮想通貨)関連の詐欺が世界的に急増していることがある。
米連邦捜査局(FBI)の報告によると、2024年における米国内の仮想通貨詐欺による損失額は93億ドルを超え、前年比で66%増加した。
このような状況を受け、テザー社はコンプライアンス遵守に積極的に取り組んでいる。
同社はFBIや米国シークレットサービスを含む、55の国と地域にわたる255以上の法執行機関と協力してきた。
2020年以降、テザー社は法執行機関の要請に基づき、合計27億ドル相当の不正なUSDTを凍結した実績を持つ。今回の投資は、こうした法執行機関への協力体制をさらに強化するものだ。
Scam Alert開発と今後の展望
テザー社とクリスタル・インテリジェンス社は、以前から協力関係にあった。
両社は共同で、詐欺に関連するウォレットアドレスを一般に公開し、警告するプラットフォームScam Alertを開発した。
このプラットフォームは、利用者が詐欺被害を回避するのに役立つだけでなく、法執行機関が不正な資金を追跡するための重要な情報源となっている。
投資の具体的な条件は公開されていないが、完全な買収ではなく、テザー社のエコシステムの安全性を高めるための戦略的提携と位置付けられている。
この提携により、USDTが安全でコンプライアンスを遵守した資産であり続けることを目指す。
テザー社のこのような取り組みは、他のステーブルコイン発行者にも影響を与え、業界全体の健全性向上に寄与することが期待される。