英金融大手スタンダードチャータードは15日、ステーブルコイン市場が2026年末までに現在の3倍以上に拡大し、米国の金融政策に大きな影響を及ぼす可能性があると分析した。
同行のデジタル資産調査責任者であるジェフ・ケンドリック氏は、現在の2400億ドル規模のステーブルコイン市場が、2026年後半までに7500億ドルに達すると予測している。
この成長は、超党派によるGENIUS法などの規制整備や、機関投資家による採用拡大が主な要因だという。
この規模に達すると、ステーブルコインはマクロ経済、特に米国債市場や世界の米ドル需要に影響を及ぼすほどの影響力を持つことになるとみられる。
米国債市場への影響
ステーブルコインの発行体は、その価値を担保するために主に米国短期国債(T-bills)を準備資産として保有している。
市場規模が7500億ドルに達した場合、準備金として必要な米国短期国債の需要が大幅に増加する。
この需要増は、米財務省に国債発行戦略の変更を促す可能性がある。具体的には、長期債から短期債へと発行の比重を移す必要に迫られるかもしれない。
こうした動きは、米国債の利回り曲線を平坦化させ、異なる満期の債券における借入コストを変化させる要因となり得ると分析されている。
世界の米ドル需要と金融政策
ステーブルコインの普及は、米ドルに裏付けられた資産への世界的な需要を高める。これは結果として、基軸通貨としての米ドルの地位をさらに強固にする可能性がある。
また、企業や地方自治体が効率的な決済手段としてステーブルコインを採用するようになれば、米連邦準備制度理事会(FRB)は、ステーブルコインがもたらす流動性の変化に対応するため、金融政策を調整する必要が出てくるかもしれない。
GENIUS法は2025年6月17日に上院で可決され、7月16日に下院で手続き動議が可決されている。
この法案は、法定通貨担保型ステーブルコインの明確なルールを確立し、機関投資家の参入を加速させる見込みだ。
企業の財務部門や金融機関が、より迅速で低コストな決済のためにステーブルコインを導入することで、市場拡大がさらに進むと予想される。
ケンドリック氏は、ビットコイン(BTC)の価格高騰(同行は20万ドルと予測)が注目される一方で、最近の政策や機関投資家との議論の90%はステーブルコインが占めていると指摘した。
これは、ステーブルコインが持つ具体的なマクロ経済への影響力が重視されていることを示している。
このように、ステーブルコインは、一般的な暗号資産(仮想通貨)とは異なる側面で、既存の金融システムに大きな影響を与える可能性を秘めている。