フロリダを拠点とする記念品メーカーのSRMエンターテインメントは30日、トロン(TRX)への大規模な資産配分を実施した。1億ドル(約144億円)規模のトロン財務戦略の一環とされる。
SRMはナスダック上場企業で、これまでテーマパーク向けの記念品製造を主事業としてきた。しかし、同社は方針を転換し、暗号資産(仮想通貨)への取り組みを本格化させている。
トロン創設者との連携と新経営戦略
今回の戦略的転換に伴い、経営体制も刷新された。新たにワイク・サン氏が取締役会会長に就任した。
また、トロンの創設者であるジャスティン・サン氏がSRMの戦略諮問委員会に加わっており、トロンエコシステムとの関係強化が進められている。
SRMは保有するTRXを活用した配当政策の導入を計画しており、ブロックチェーン中心の新たな事業方針に合わせて、社名をTRON Inc.に変更することも検討中とされる。
従来の事業収益は過去1年で439万ドルにとどまるが、流動比率は3.66倍で負債よりも多くの現金を保有しており、財務は健全だ。
ステーキングと市場の反応
SRMは保有するTRXを、トロンのDeFiレンディングプラットフォームJustLendでステーキングする。
この戦略ではステーキング報酬に加え、バリデーターにエネルギーを貸し出すエネルギーレンタルも組み合わせて収益を得る。同社はこれらの仕組みを通じて、年間最大10%の収益を目指している。
一連の事業転換は市場の関心を集めており、SRMの株価は過去6カ月で約12倍に上昇した。一方で直近1週間では2割近く下落するなど、高い変動性も示している。
SRMの戦略は仮想通貨の価格変動や規制リスクを伴うものの、潤沢な自己資本と低い負債比率により、当面のリスクは限定的とみられる。
SRMによるTRXへの大規模な資産配分は、マイクロストラテジーがビットコイン(BTC)に大規模投資を行った事例と類似するが、SRMはトロンという異なる資産を選択した点で特徴的だ。