米証券取引委員会(SEC)は30日、PayPal(ペイパル)の米ドル連動ステーブルコイン「PYUSD」に関する調査を終了した。
これは、強制措置を伴わずに実施された調査だ。 ペイパルは規制当局への提出書類でこの事実を開示した。
調査は2023年11月にPYUSDのローンチ及び運営に関する召喚状が発行されたことに端を発し、2024年2月に正式に終了した。
PYUSDは2023年8月、第三者機関であるPaxos(パクソス)によって発行され、イーサリアムブロックチェーン上で運用開始された暗号資産(仮想通貨)だ。
調査終了の背景にある要因
今回の調査終了は、2025年1月に発足したトランプ政権下での仮想通貨に対する執行措置の後退と一致する。
政権交代後、リップル社やジェミニ社に対する訴訟が取り下げられるなど、規制当局の監視が緩和される傾向が見受けられる。
仮想通貨業界は、明確な規制策定よりも執行措置に依存するSECの姿勢を長らく批判してきたが、当局の優先順位が変化している。
また、ペイパルが積極的に推進した戦略的パートナーシップも影響している可能性がある。
Coinbase(コインベース)との手数料無料取引提携やソラナ(SOL)ブロックチェーンへの展開、ムーンペイ(MoonPay)との決済統合などが、PYUSDの普及を後押しする動きとして評価される。
SECはこれらのイノベーション動向を阻害しない方針を示した可能性も考えられる。
PYUSDの市場での挑戦
PYUSDは現在、時価総額8億7990万ドル規模にとどまっている。 一方、テザー(USDT)の時価総額は1484億ドル、USDコイン(USDC)は620億ドルに上るため、依然として小規模な状況である。
ステーブルコイン市場においては、依然激しい競争が続いている。 ペイパルはPYUSD普及拡大に向けた施策を積極的に展開している。
2024年5月にはソラナブロックチェーン上で運用を開始し、Anchorage Digital(アンカレッジ・デジタル)とステーブルコイン向け報酬システムの開発で提携した。
また、イーサリアム以外のアルトコインブロックチェーンへの展開は、流動性とアクセス性の向上を狙うものである。
さらに、米国内ユーザー向けにPYUSD保有額へ年率3.7%の利回りを提供する計画が進められており、個人および機関投資家の誘致を目指す。
特に機関投資家向け資産管理においては、コールドウォレット等による厳格なセキュリティ対策が求められている。