暗号資産(仮想通貨)リップル(XRP)の発行企業であるリップル社は15日、コロンビアで自社の分散型台帳技術「XRPレジャー」を活用した農業分野の金融包摂パイロットの開始を発表した。
今回のプロジェクトは「Unlocking Opportunity」という取り組みの一環で、非営利組織メルシーコープスベンチャーズおよび現地パートナーのウェイアと連携して進められる。
農家の金融アクセス拡大と収入向上
このパイロットでは、主にパネラ(未精製サトウキビ糖)を生産する300人の小規模農家が対象だ。
新たな「Farm Now, Pay Later(今育てて、後で支払う)」モデルにより、農家は将来の収穫を担保とした資金調達を受けることができる。
これにより、従来のような信用情報や書類に依存することなく、必要な資金を早期に確保可能となる。
コロンビアでは小規模農家の86%が非公式に事業を営み、信用履歴を持たないため、農村部人口の79%が金融サービスにアクセスできていない。
これが農家の所得低迷につながり、生計費の7割程度しか得られない背景となってきた。
リップルやパートナー団体は、農家が生産したパネラのトレーサビリティや持続可能性を証明する仕組みも導入。
作物ごとにQRコードを付与し、植え付けから収穫、流通までの履歴をブロックチェーンに記録することで、信頼性の高い監査証跡を提供する。
ブロックチェーンによる透明性と社会的インパクト
XRPレジャーは即時性と改ざん耐性を備えた分散型台帳として、農作物の流通履歴や持続可能性認証を透明かつ信頼性高く記録できる。
ウェイアのGシリーズ・アグレスト設計によるQRコード追跡システムにより、世界的な食品詐欺リスクの軽減と市場競争力強化が期待されている。
世界の食料供給の約1割が不正の被害を受け、被害総額は年500億ドル(約7,300億円)にも上るとされる。
ブロックチェーン技術の活用により、真に持続可能な農産物であることを証明できれば、農家はより高価格で販売できるようになると見込まれる。
また、本パイロットに参加する農家の46%が女性となっており、これはコロンビア農業界の平均(26%)を大きく上回る。
パネラの月間処理量は240トンに及び、今後の拡大も視野に入れている。
伝統産業×ブロックチェーンの新たな可能性
今回の取り組みは、仮想通貨関連技術が金融領域を超えて社会課題の解決に応用できることを示している。
リップルのXRPレジャーを活用した農業分野での実証実験は、金融包摂やサステナビリティ推進といった国際的潮流にも沿ったものだ。
非伝統分野でのブロックチェーン適用が広がることで、今後も金融サービスの裾野拡大や食品の信頼性向上といったインパクトが期待されている。