パラグアイのサンティアゴ・ペニャ大統領の個人X(旧ツイッター)アカウントは9日、何者かに乗っ取られ、虚偽の投稿がされた。
この投稿は、同国が暗号資産(仮想通貨)の一種であるビットコイン(BTC)を法定通貨として採用し、国の準備金として500万ドル(約7億2500万円)相当のビットコインを確保したと主張する内容だった。
しかし、大統領府の公式アカウントは速やかに介入し、この情報は虚偽であると発表した。政府は、ペニャ大統領の個人アカウントが不正アクセスを受けたと説明し、国民に対して投稿を無視するよう呼びかけている。
近年、著名人のソーシャルメディアアカウントを標的としたサイバー攻撃は増加傾向にあり、今回の事件もその一例と見られている。
ハッキングによる偽の法定通貨化宣言
乗っ取られたアカウントからの投稿には、パラグアイの国章が入った法令を模した画像が添付されていた。その内容は、ビットコインを法定通貨と認め、仮想通貨を利用する国民向けに債券プログラムを開始するというものだった。
しかし、この法令とされる文書は体裁が整っておらず、政府の公式サイトや国内メディアでの公式発表も一切なかった。さらに、投資家に「持ち分を確保する」よう促す文言と共に、ビットコインのウォレットアドレスが記載されていた。
このような手口は、政府の承認を装って投資家を誘い込む典型的な詐欺の手法である。エルサルバドルが2021年にビットコインを法定通貨化した事例もあり、中南米地域での仮想通貨への関心の高まりが、今回の偽情報を信じ込ませる背景となった可能性が指摘される。
オンチェーンデータが暴く詐欺の実態
この詐欺疑惑は、オンチェーンデータによって裏付けられた。投稿で示されたウォレットアドレスをブロックチェーン分析ツールで調査したところ、残高は5ドル(約725円)にも満たないことが判明した。
500万ドルの国家準備金があるという主張とは大きく食い違い、発表以降の取引記録も確認されなかった。この事実は、投稿内容が全くの虚構であることを示している。
パラグアイ大統領府はX上で公式に警告を発し、国民には政府の認証済みチャネルからの情報のみを信頼するよう強く求めた。一部の仮想通貨関連メディアは当初、この発表を事実として報じたが、その後の公式発表やデータ分析により詐欺であることが確認された。
このような虚偽情報は、仮想通貨の健全な発展を妨げる要因となりうる。
今回の事件は、ソーシャルメディアの脆弱性と、仮想通貨を巡る投機的な詐欺のリスクを改めて浮き彫りにした。情報の真偽を複数の情報源で確認する重要性が、一層高まっているといえるだろう。
特に本人確認なし取引所は、詐欺師にとって資金洗浄の温床となりやすいため注意が必要である。