ドイツ規制当局がUSDeトークン事業を停止、準備金凍結

私たちを信頼する理由
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ドイツ規制当局による仮想通貨規制を象徴するイメージ

ドイツの金融規制当局BaFinは21日、投資会社Ethena GmbHが扱うUSDeトークンの新規事業に対し公的な販売停止措置を実施し、併せて資産準備金の凍結を決定した

BaFinはEthena GmbHのUSDeトークン承認プロセスに重大な欠陥を発見したことを理由に今回の措置に踏み切った。

USDeトークンは資産連動型トークンであり、米ドルと等価を維持するため、さまざまな暗号資産(仮想通貨)やアルゴリズム的ヘッジ戦略を用いている。

本措置は、Ethena GmbHの行為がEU圏の仮想通貨規制であるMiCAR(Markets in Crypto-Assets Regulation:EU圏における暗号資産の統一規制)に違反している疑いに基づいている。今回の措置は、規制遵守の徹底を促す狙いも含まれている。

規制違反の内容と影響範囲

BaFinによると、Ethena GmbHは必要な目論見書を作成せず、証券として「sUSDe」トークンの販売を行った疑いがある。また、資産準備金や資本要件を満たしていないことが、MiCAR規制の遵守不足と認定された。

さらに、過渡期間中に承認待ちの状態でUSDeトークンを発行し続けたことが問題視されている。

現在、約54億枚のUSDeトークンが流通しており、その多くはドイツ国外で発行され、MiCAR施行前から市場に出回っている。

規制当局は、準備金凍結や販売停止措置が新規発行や初期販売に影響するものの、二次市場での取引には影響を及ぼさないと説明している。つまり、既に発行され市場に流通しているUSDeトークンの取引は引き続き可能である。

規制強化の背景とEthenaの対応

EUは2024年にMiCAR規制を完全施行し、仮想通貨事業者への規制を強化した。今回のBaFinの措置は、同規制施行後初となる大規模な規制行動の一環である。

一方、Ethena BVI Limitedは2025年初頭からUSDeトークンの発行を継続しているが、現段階ではドイツでの凍結措置がその運営に直接影響しないとされる。

とはいえ、EU各国の規制当局が協調する中、他国での規制強化に波及する可能性も否定できない。 仮想通貨業界では、監視の厳格化に伴いMiCAR等の規制枠組みへの適切な対応が今後ますます重要となる。

特に、ステーブルコインやその他の資産連動型トークンを発行する企業には、適正な資産準備金の確保と透明性の向上が求められるだろう。

本事例は、仮想通貨市場における規制の重要性や、国際的な規制枠組み下で事業を展開する企業が直面する課題を浮き彫りにしている。

今後は、投資家保護とイノベーション促進の両立を図るとともに、仮想通貨の税金や規制対応を含む包括的なコンプライアンス体制の整備が業界全体の課題となるだろう。

峯 竜也

暗号資産とブロックチェーン技術に特化したジャーナリスト。業界の最新動向や市場分析を発信。技術的な深掘りから初心者向けガイドまで、幅広い読者に向けたコンテンツ制作を得意とする。