破綻した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXは11日、顧客への返済手続きを円滑に進めるため、決済サービス大手Payoneerを新たに3社目の分配パートナーとして採用した。
この提携は、デラウェア州連邦破産裁判所の監督下にあるチャプター11再生計画の一環だ。
FTXはすでに仮想通貨取引所Krakenやカストディ企業のBitGoをパートナーとしており、Payoneerの参加により返済体制をさらに強化する。
グローバルな返済網の強化へ
Payoneerは5月30日以降、債権の申し立てを行ったリテール顧客への資金分配を支援する。第3段階の返済開始後、対象者はPayoneerを通じて資金を受け取ることが可能となる。
Payoneerは世界190カ国以上で事業を展開しており、同社の広範なネットワークはFTXが抱える国際的な返済物流課題の解決に重要な役割を果たす。ユーザーは自身の債権をPayoneerのプラットフォームに振り向ける必要があり、これによりFTXからの直接現金分配を受ける権利を放棄することになる。
今回の提携は、FTXが裁判所から命じられた返済義務を順守しながら、詐欺リスクを最小限に抑える取り組みの一環である。同社はこれまでに2段階の分配で70億ドル(約1兆150億円)以上を返済しており、新たな分配チャネルの追加により今後の支払いを合理化する狙いだ。この状況は、信頼できる仮想通貨海外取引所の選定が重要であることを示している。
市場の反応と今後の課題
今回の発表を受け、FTXの独自トークンであるFTXトークン(FTT)の価格が一時的に反応した。報道後24時間で価格は1.8%上昇し、約0.98ドル(約142円)となった。これは、仮想通貨市場全体の動向とは異なる様相を示す。
一方でFTXは、自社の債権請求ポータルを装ったフィッシング詐欺に対し、利用者に注意を呼びかけた。公式を名乗る偽の電子メールやウェブサイトが確認されているため、FTXがウォレット接続や支払いを求めることは決してないと強調する。同社は個人資産保護のためにコールドウォレットの利用を推奨している。
法的手続きは依然として複雑である。資金分配は公式の債権登録簿に記録された承認済み債権の譲受人にのみ実施され、支払い実行前に21日間の異議申し立て期間が設けられる。
また、一部の債権者は、Payoneerが主要市場で事業運営上の制約を抱えている点を指摘し、今回の提携に批判的な意見を示している。FTXは複雑な国際返済の課題管理と破産手続きの解決に向けた取り組みを継続している。