デジタル眼科技術を手がけるアイノビアが6月17日、機関投資家との間で5000万ドル(約72億5000万円)の第三者割当増資(PIPE)契約を締結し、暗号資産準備金を設けた。
調達資金は、HyperliquidブロックチェーンのネイティブトークンであるHYPEを100万以上取得するために充てられる。これにより、同社は世界有数のバリデーターとなり、ナスダック上場企業として初めてHYPEトークンを保有することになる。
今回の動きは、ブロックチェーンとDeFiの成長機会を財務戦略に組み込む狙いがある。
事業の多角化と企業再編
仮想通貨分野への進出と同時に、アイノビアは社名をHyperion DeFiに変更し、2025年6月20日までにティッカーシンボルをHYPDに変更する計画だ。
戦略転換の一環として、ヒョンス・ジョン氏が最高投資責任者(CIO)兼取締役に就任し、アンカレッジ・デジタルを通じてHYPEトークンのステーキングプログラムを監督する予定となっている。
PIPEでは、議決権のない転換優先株(約1540万株の普通株に転換可能)と、1株あたり3.25ドルで3080万株を購入できるワラント(新株予約権)が発行された。
ワラントがすべて行使された場合、最大1億5000万ドル(約217億5000万円)の資金調達が見込まれる一方で、株主価値の希薄化リスクも伴う。
この戦略的転換は、同社がブロックチェーンとDeFiを高成長分野と見なし、長期的なキャピタルゲインを見据えていることを示している。
既存事業と今後の展望
仮想通貨事業への進出後も、アイノビアは眼科技術事業を継続する。特に、第2世代のOptejetユーザー充填デバイス(UFD)は、2025年9月までの米国食品医薬品局(FDA)登録を目指して開発中だ。
同社はOptejetについて、非臨床規制経路を用いた消費者向け製品と、独自開発の医薬品・デバイス一体型製品の2軸で開発を進めている。
2024年11月と12月には、それぞれ130万ドル(約1億8850万円)と190万ドル(約2億7550万円)の資金調達を実施し、運転資金やデバイス開発に活用してきた。
今回の戦略は、仮想通貨と眼科技術という異分野を掛け合わせ、基幹技術を維持しながら成長分野への展開を図るものだ。