イーサリアム財団は2025年7月31日、今後10年間の開発指針となる新たなロードマップ、Lean Ethereumを公表した。
この計画は、イーサリアム(ETH)の創設10周年を記念して公開されたもので、スケーラビリティ、セキュリティー、分散化の維持を三本柱としている。
ネットワークの中核を再構築し、ベースレイヤーで毎秒1万トランザクション(TPS)、レイヤー2ソリューションを通じて100万TPSの達成を目指す。
量子コンピュータの脅威に備える技術的対策
新ロードマップの主要な目的の一つは、量子コンピュータによる将来的な脅威への対応だ。現在の暗号技術にリスクをもたらす量子攻撃に備え、耐量子計算機暗号の統合を進める。
その実現に向けた技術的改良も計画されている。
コンセンサスレイヤーはBeacon Chain 2.0に更新され、ファイナリティの高速化とセキュリティー向上が図られる。データレイヤーではBlobs 2.0が導入され、ハッシュベースのデータ構造により効率性と量子耐性を強化。
また、実行レイヤーのEVM 2.0は、SNARK技術に適した命令セットを採用し、ゼロ知識証明の検証を高速化する。
これらの取り組みにより、暗号化の仕組みがネットワーク全体で統一され、設計の簡素化も進む。
スケーラビリティと分散化の両立を目指す
イーサリアムは、他のブロックチェーンとの競争が激化する中で、スケーラビリティの強化が急務となっている。
今回のロードマップは、そうした市場の要求に応えるものであり、同時に分散化というイーサリアムの基本理念を守るため、技術的障壁の低減にも取り組む。
具体的には、ネットワークの肥大化を抑え、一般ユーザーのスマートフォンやブラウザでもフルノード検証が可能な構造を目指す。
これにより、開発者やノード運用者の参入障壁が下がり、エコシステムの成長が期待される。こうした技術革新は、他の主要なアルトコインとの差別化にも寄与する。
この動きは、機関投資家の関心も集めている。ジ・イーサ・マシンによる5690万ドル相当のイーサリアム購入はその一例だ。
最終的には、ステーキングされた資産総額を1兆ドル規模まで拡大し、ネットワークのセキュリティーと分散化を確立する戦略を掲げている。