イーサリアムのブテリン創設者、スケーラビリティ向上案発表

私たちを信頼する理由
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イーサリアムのブロックチェーン進化を表す抽象的なデジタルアート

イーサリアムのヴィタリック・ブテリン共同創設者は20日、イーサリアムの性能を上げるため、現在のプログラム実行の仕組み(EVM)を、新しい技術設計(RISC-V)に置き換えるという提案を公表した

EVMの課題とRISC-Vへの期待

イーサリアム上でスマートコントラクト(契約履行管理の自動化)を実行する基盤であるEVMは、計算効率などの面で限界に直面している。

これがイーサリアムのスケーラビリティにおける主要な課題となっている。

特に、ソラナ(SOL)やスイ(SUI)のような新しいブロックチェーンは、より高い処理性能を持つ設計を採用しており、イーサリアムにとって競争圧力が高まっている状況だ。

こうした高性能なアルトコインの台頭も、イーサリアムが変革を迫られる一因となっている。こうした背景から、実行レイヤーの抜本的な改革が求められている。

RISC-Vは、誰でも使えるCPUの設計ルールで、半導体チップにしやすいのが利点だ。

イーサリアムの処理を効率的に検証する技術(ZK-EVM)では、処理内容をこのRISC-Vの形式に変換し、元の処理が正しいかどうかを効率的に検証・証明する方法が、実際に使われている。

ブテリン氏の提案内容と影響

今回ブテリン氏が提案したのは、この変換プロセス自体を不要にするものだ。

スマートコントラクトを直接RISC-V向けに変換することで、理論上は最大100倍のパフォーマンス向上が可能になるとされる。

この変更は、イーサリアムが長年抱えるスケーラビリティの問題の解決に繋がる可能性がある。

加えて、イーサリアムの取引などを速く安く処理する『Layer 2』という技術で重要な、間違いなく処理したという証拠(ゼロ知識証明)を作る作業も、より速く簡単になると期待されている。

これらの技術進歩は、ユーザーがより快適に分散型アプリケーション(DApps)を利用できる未来を示唆しており、その際には安全なweb3ウォレットの活用が鍵となるだろう。

ブテリン氏は、イーサリアムの基盤部分(コンセンサス層)が、新しい技術でよりシンプルになったのだから、プログラムを実行する部分(実行レイヤー)も大きく変える必要があると強調した。

互換性と今後の展望

ブテリン氏の提案の良い点は、新しい仕組みのRISC-Vが導入されたとしても、現在イーサリアム上で動いているスマートコントラクトは、問題なく使用できるという点だ。

さらに、古いプログラムと新しいプログラムがお互いに連携できる「後方互換性」という性質も維持される見込みだ。

利用者のアカウント情報や、プログラム同士が情報をやり取りする基本的なルールは変わらない。

プログラムを作る開発者にとっても、負担が増えることはない。

現在イーサリアムで広く使われているプログラミング言語(SolidityやVyperなど)は、継続して使用できる。

開発者が書くコードは同じで、最終的にプログラムの形式が変わるだけ、というイメージだ。

この変更によって、イーサリアムの処理高速化の技術(ゼロ知識証明作り)もスピードアップし、レイヤー2技術などの仕組みが高性能化の助けになると期待されている。
この改善案が出てきた背景には、最近のイーサリアムの手数料(ガス代)が下がっている状況がある。
手数料が安いのは利用者には良いことだが、一方で、システム運営者(バリデーター)の報酬を確保するという点で課題も出ている。
そのため、イーサリアム全体の性能を上げて利用者を増やすことが、今すぐに解決すべき重要な課題になっている。
この提案がイーサリアムのコミュニティでどのように受け止められ、実現に向けて進むのか、今後の動向が注目される。
この技術革新はイーサリアムの将来性に大きく関わるため、仮想通貨 長期保有を考える上で重要な判断材料となるだろう。

著者: 松田 明日香

暗号資産投資を2020年に始め、ビットコインやNFT、DeFiなど複数の分野で投資経験を有する。2025年1月にICOBenchに参加し、専門的な暗号資産ライティングを手掛けている。