モーニングスターは9日、5月の暗号資産(仮想通貨)ファンドの運用資産総額が過去最高を記録した。
運用資産総額は1670億ドルに達している。
記録的な資金流入と市場の対照的な動き
5月、294の仮想通貨ファンドへ流入した純資金は70億5000万ドルに上り、2024年12月以来の月間最高額を更新した。この力強い資金流入により、仮想通貨ファンド全体の運用資産総額が歴史的水準に押し上げられた。
資金流入の内訳を見ると、ビットコイン(BTC)に焦点を当てたファンドが55億ドルの純流入を確保し、依然として市場を牽引している。また、イーサリアム(ETH)関連のファンドも8億9000万ドルの純流入を集め、根強い需要を示している。
この動きは伝統的な資産市場とは対照的だ。同期間中、株式ファンドからは59億ドルの資金が流出。また、金ファンドも15ヶ月ぶりに純流出に転じ、6億7800万ドルが引き揚げられた。
このデータは、投資家がポートフォリオの再配分を進めていることを示唆している。
機関投資家の参入とマクロ経済の変化が追い風
仮想通貨市場への資金流入の背景には、複数の要因が絡み合っている。ドル安観測や債券利回りの上昇、株式市場の先行き不透明感から、投資家は従来の米国資産から仮想通貨へ資金を移している。
実際、ビットコインは過去3ヶ月で15%上昇し、金(13.3%)やMSCI世界株価指数(3.6%)を上回るパフォーマンスを示した。これにより、リスク回避を求める資本と投機的な資本の双方が市場に流入した。
特に、米国での現物ビットコインETFの承認が、機関投資家の信頼感を高める大きな要因となった。この承認が過去12ヶ月間にわたる継続的な資金流入を支えている。
フィンテック企業の幹部やアナリストは、仮想通貨がマクロ経済の変動に対するヘッジ手段として認識されつつあると指摘している。
さらに、米中間の貿易摩擦緩和により市場のリスク許容度が高まり、デジタル資産への分散投資が促進された。
今後の見通しと専門家の見解
ビットコインが流入額の大半を占める一方、イーサリアムへの堅調な資金流入は、スマートコントラクトプラットフォームへの関心の高まりを反映している。
運用資産総額1670億ドルという節目は、特に地政学的・経済的な不確実性が高まる時期において、仮想通貨の資産配分戦略における役割が拡大していることを示している。
しかし、一部のアナリストは、現在の資金流入が長期的な普及よりも短期的な市場心理の変動を反映している可能性を警告する。
仮想通貨市場の持続的成長には、規制の明確化が不可欠であると専門家は強調している。
また、ビットコインやイーサリアム以外のアルトコイン市場への資金流入の可能性も指摘され、今後の動向に注目が集まっている。