暗号資産(仮想通貨)を保有する上場企業の累積時価総額はこのほど、1600億ドルに達した。
これは、2025年初頭の約900億ドルから約78%の増加となる。
企業財務の新たな潮流、仮想通貨保有が加速
この傾向は、企業がインフレへのヘッジやポートフォリオの多様化を目的として、仮想通貨をバランスシート上の重要資産と見なす戦略的な転換を反映している。
特に、マイケル・セイラー氏率いるストラテジー社の動向に注目が集まる。同社は、インフレに脆弱な現金準備に代わる手段として、2025年6月時点でビットコイン(BTC)を58万2000枚以上保有し、評価額は約620億ドルに達している。
こうした企業の価値評価には、mNAV(純資産価値倍率)と呼ばれる新たなモデルが使われるケースもある。
仮想通貨の保有量に応じて株価にプレミアムが加わるこの仕組みは、専門的な資産運用への市場の期待感を映し出すものだ。
伝統的投資家の需要とアルトコインへの広がり
この動きの背景には、規制された株式市場を通じて仮想通貨へアクセスしたいという、伝統的な投資家の根強い需要がある。
そのため、仮想通貨を保有する企業の株式は、投資家にとって魅力的な選択肢となってきた。
企業の姿勢も変化しつつあり、ストラテジー社は転換社債や株式発行で得た資金を用い、ビットコインを積極的に追加購入している。
こうした流れはビットコインだけにとどまらず、アルトコインにも波及。たとえば、製薬会社のMEIファーマはライトコインを取得後に株価が急騰し、市場の注目を集めた。
一方で、このような動きにはリスクも指摘されている。デジタル資産運用会社コインシェアーズのジェームズ・バターフィル氏は、専門知識の不足や市場の変動性、戦略の過密化に懸念を示した。
それでもなお、企業の株価に投機的なプレミアムがついている現状は、仮想通貨が単なる投機対象を超え、価値の保存手段として認識されつつあることを物語っている。