ステーブルコインUSDCを発行するサークルは6月30日、米国通貨監督庁(OCC)に連邦規制の信託銀行設立を申請した。
申請が承認された場合、First National Digital Currency Bank, N.A.として、USDC準備金の自己管理や、機関投資家向けのデジタル資産カストディサービスを提供する。預金や貸付業務は行わず、専門的なカストディ機関となる見通しだ。
規制強化への対応と事業効率化
今回の申請は、米国で審議が進む規制への対応を主な目的としている。上院で可決されたステーブルコイン法案は、準備金の管理における透明性や、高品質な資産による裏付けを求めている。
また、GENIUS法案は、ステーブルコイン発行者に対する監督をさらに強化する内容で、今夏にも最終決定される見通しだ。
連邦政府公認の信託銀行免許を取得することで、サークルは州ごとのライセンスなしに全米で事業を展開できるようになる。
これにより事業拡大の効率化が進み、従来の金融機関と同様にOCCの直接的な監督下に入ることになる。
時価総額410億ドル、年間収益19億ドルを誇る同社は、規制の枠組みに沿うことでUSDCのインフラ強化を図る構えだ。
市場競争と今後の戦略
暗号資産(仮想通貨)業界では、すでにパクソスやアンカレッジといった企業が同様の連邦信託銀行免許を取得し、サービスを提供している。サークルの動きは、こうした競合他社に追随する形となる。
現在、USDCの準備金はBNYメロンなどの金融機関で保管され、ブラックロックが米国債などの資産を管理している。新銀行は、こうした外部パートナーとの連携を維持しつつ、管理プロセスの一部を内製化する方針だ。
新銀行が提供するカストディサービスは、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)といった仮想通貨ではなく、株式や債券などのトークン化された現実資産に重点を置くのが特徴となる。
サークルは、ニューヨーク州のビットライセンスや欧州連合(EU)のMiCAなど、各国の規制当局の承認を得てきた実績がある。
今回の申請は、ステーブルコインとデジタル資産を伝統的な金融インフラに統合し、信頼性と普及を高める取り組みの一環とみられる。