世界第2位の仮想通貨取引量を誇るBybit(バイビット)は29日、オーストリア金融市場監督庁(FMA)から欧州連合(EU)の暗号資産市場規制(MiCA)に基づく認可を取得した。
この認可により、同社は29の欧州経済領域(EEA)加盟国で約5億人の欧州人を対象に暗号資産(仮想通貨)サービスを提供できるようになった。同時にウィーンに欧州本社も設立した。
ハッキング被害からの信頼回復戦略
今回のMiCA認可取得は、2月に発生した史上最大規模となる15億ドル(約2175億円)のハッキング被害からの信頼回復を図る戦略の一環でもある。
攻撃者はBybitのイーサリアム(ETH)コールドウォレットを侵害し、約40万1000ETHを不正に送金した。
ハッキング事件では、北朝鮮のハッカー集団「ラザルス・グループ」の関与が疑われている。攻撃者はBybitの開発者のコンピューターに侵入し、ユーザーインターフェースのコードを改変することで、正当な取引のように見せかけながら悪意のあるトランザクションに署名させる手法を用いた。
Bybitは事件後72時間以内に、ギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)、ファルコンX(FalconX)、ウィンターミュート(Wintermute)などの企業からの緊急融資により、約44万7000ETHを確保し準備金を補充した。同社はユーザー資産の1対1の裏付けを維持し、出金業務も継続した。
欧州市場での事業拡大計画
MiCA規制への準拠により、Bybitは透明性の向上、不正行為の防止、EU圏内の消費者保護といった厳格な基準を満たすことになる。同社はウィーンでの事業展開に向け、100人以上の専門職員の雇用を計画している。
Bybit Europeのマズルカ・ゼン(Mazurka Zeng)CEOは「MiCA認可の取得は、欧州の高い規制基準に沿った当社のコンプライアンスと透明性へのコミットメントを示している。
ウィーンがBybit Europeの拠点となり、人材と新しい仮想通貨への投資を通じてオーストリアの先進的な金融環境に貢献できることを誇りに思う」と語った。
同社はブロックチェーン・フォー・グッド・アライアンス(BGA)を通じて、地域の大学との密接な連携も進める予定となっている。次世代のブロックチェーン革新者の育成と、同技術の実世界での影響力のある応用を探求することを目的としている。