ボリビア中央銀行は30日、エルサルバドル中央準備銀行と暗号資産(仮想通貨)の導入に向けた協力覚書を締結した。
この合意は、ボリビアの金融システムを近代化し、デジタル化を推進する取り組みの一環である。両国の中央銀行は、仮想通貨の採用に関する経験や知識を共有し、金融分野における協力関係を強化する。
特に、エルサルバドルが2021年にビットコイン(BTC)を世界で初めて法定通貨として採用した経験が、今回の協力の核となる。
ボリビアは、そのプロセスから得られた教訓を自国の金融政策に生かすことを目指している。
エルサルバドルの知見を法的・技術的枠組みへ
覚書に基づき、両国は仮想通貨を規制し、監督するための法的枠組みの構築で協力する。
これには、マネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与対策(CFT)など、国際的な基準に準拠した規制の整備が含まれる。
また、技術的な側面でも連携を深める方針だ。安全で効率的な仮想通貨取引プラットフォームの設計や、国民が利用しやすいデジタルウォレットの普及、金融リテラシー向上のための教育プログラムなどが検討課題となる見込みである。
エルサルバドルの事例は、成功体験だけでなく多くの課題も浮き彫りにした。ビットコインの価格変動リスクや、国民への普及率の伸び悩み、国際通貨基金(IMF)からの度重なる批判など、ボリビアが事前に検討すべき点は少なくない。
金融包摂とドル依存脱却への期待
ボリビアが仮想通貨に関心を示す背景には、国内の金融包摂を拡大したいという強い動機がある。
銀行口座を持たない国民に対し、安価で迅速な金融サービスを提供する手段として、仮想通貨に期待が寄せられている。
さらに、海外で働く国民からの送金は、ボリビアにとって重要な外貨収入源となっている。仮想通貨を利用すれば、既存の金融システムを介すよりも送金手数料を大幅に削減できる可能性がある。これは、エルサルバドルがビットコイン導入の主な目的の一つに掲げた点と共通する。
中南米諸国の多くは、米ドルへの経済的依存を長年の課題としてきた。仮想通貨の導入は、自国経済の主導権を取り戻し、ドルへの依存度を低減させるための戦略的な一手と見る向きもある。同様の目的で、他の国々ではステーブルコインの活用も模索されている。
しかし、仮想通貨の導入には慎重な意見も根強い。ボリビア国内では、中央銀行が過去に仮想通貨の使用を禁止する声明を出した経緯もあり、今回の政策転換には丁寧な国内の合意形成が不可欠となるだろう。
今回の覚書締結は、ボリビアが仮想通貨に対してより前向きな姿勢に転換したことを示す重要な一歩だ。
エルサルバドルとの協力が、ボリビアの金融の未来にどのような影響を与えるか、今後の動向が注目される。