ビットコインの新たな量子攻撃対策、アドレスの強制移行を検討

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量子コンピューターの脅威からビットコインウォレットを保護する概念図

ビットコイン(BTC)開発者のアグスティン・クルーズ氏は5日、ビットコイン開発者メーリングリストに「量子耐性アドレス移行プロトコル(QRAMP)」と題したビットコイン改善提案(BIP)のドラフトを公開した。

この提案では、量子コンピューティングがもたらす潜在的な脅威からビットコインを保護することを目的としている。

量子コンピューティングの脅威に対する予防策

量子コンピューターの計算能力向上により、ビットコインが現在使用している楕円曲線デジタル署名アルゴリズム(ECDSA)などの従来の暗号化手法が危険にさらされる可能性がある。

クルーズ氏のプロトコルは、量子コンピューターによる攻撃に脆弱な古いアドレスから、量子耐性を持つウォレットへの資金移行をハードフォークによって強制することが検討されている。

具体的には、更新されたソフトウェアを実行するノードが、事前に決められたブロック高の後にレガシーアドレスからのトランザクションを拒否するハードフォークを提案している。

これにより、量子耐性のあるウォレットに移行しない限り、古いアドレスの資金が実質的に使用不可能になる仕組みだ。

コミュニティの反応と実装課題

この提案は差し迫った量子ブレイクスルーへの対応というよりも、予防的な措置を強調している。具体的には、移行期限を設定し、その期間内にユーザーが自由に資金を安全なウォレットに移動できるようにする。期限後は、アップグレードされていないウォレットからのトランザクションは拒否される。

しかし、QRAMPの実装にはまず、ハードフォークの必要性がビットコインコミュニティ内で抵抗に直面する可能性がある。過去の経験やブロックチェーンの基本構造を変更することへの哲学的な反対から、反発が予想される。

また、サトシ・ナカモトに帰属するコインなど、非アクティブな資金への影響も懸念事項として挙げられている。これらの保有者は資金を移行する意思や能力がない場合があり、問題となる可能性がある。

量子技術の進展と仮想通貨の対応

マイクロソフトのMajorana 1など、量子技術の最近の進歩は、暗号資産(仮想通貨)のための量子耐性ソリューションを開発する緊急性を強調している。量子コンピューティングの計算能力が向上し続けるにつれて、ビットコインを含む現在の仮想通貨システムに対する潜在的な脅威も増大している。

こうした背景からクルーズ氏のQRAMP提案は、ビットコインの長期的な安全性を確保するための先見的な取り組みと言える。

しかしビットコインのような分散型システムでは、実装に向けては技術的な課題だけでなく、コミュニティの合意形成という大きなハードルが待ち構えている。

早藤 佑太

2020年より暗号資産(仮想通貨)投資を開始。2021年よりSNSやブログでもコンテンツ発信を開始。2025年よりICOBenchのライターとして参加。