デジタル資産管理プラットフォームFireblocksのIdan Ofrat創業者は29日、ビットコインとイーサリアムは量子コンピュータの脅威に対して準備ができていないと警告した。
現在の暗号資産(仮想通貨)のセキュリティ基盤は、将来的に登場する高性能な量子コンピュータによって根本から覆される可能性があるという。
量子コンピュータがもたらす技術的脆弱性
ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)は、ウォレットのアドレス保護や取引の検証に楕円曲線暗号(ECC)と呼ばれる技術を利用している。しかし、このECCはショアのアルゴリズムとして知られる量子計算手法に対して脆弱であることが指摘されている。
このアルゴリズムを搭載した量子コンピュータが実用化されれば、ビットコインの暗号セキュリティの根幹をなす問題を解読できる。その結果、公開されたアドレスや古い暗号技術に起因し、ビットコイン総供給量の25%以上が危険に晒される可能性がある。
イーサリアムの基盤も同様の脅威に直面している。ほとんどのブロックチェーンがECCや特定のデジタル署名方式に依存しているためだ。この脆弱性は、仮想通貨エコシステム全体に共通する課題といえる。
業界の遅れる対応と残された時間
アルゴリズム取引会社のアナリティクス部門プレスト・リサーチのリック・マエダ氏は、仮想通貨業界はこの迫りくる脅威に対して準備ができていないと主張する。
サイバーセキュリティ予算のうち、耐量子計算機暗号への移行に割り当てられているのはわずか2%に過ぎない。
一方で、大手コンサルティング会社のキャップジェミニによると、大企業の70%はこの移行に備えているという。仮想通貨分野の対応の遅れは際立っている。
現在の量子コンピュータはECCを破るほどの性能を持たないが、技術開発は急速に進んでいる。研究者らは、より安全なアルゴリズムへ移行するための時間は5年から10年しか残されていないと強調する。
解決策として、格子暗号やハッシュベース署名などの耐量子技術への移行が挙げられるが、これには複雑なプロトコルの抜本的な見直しが必要となる。
分散型の仮想通貨コミュニティでは、こうした大規模な更新における合意形成が大きな課題となっている。