中国のインターネット金融大手アント・グループの子会社であるアント・インターナショナルは10日、Circle社と提携し、ステーブルコインUSDCを自社のブロックチェーンプラットフォームに統合する計画を明かした。
この統合は、米国の規制要件の完了を条件としている。USDCは時価総額で2番目に大きいステーブルコインで、その規模は620億ドルに上る。
アントは、特に資金管理や国境を越えた決済分野で、規制に準拠した金融インフラを強化する狙いである。
提携の背景と規制の動向
今回の提携の鍵となるのは、規制への準拠である。統合は、Circle社が米国のステーブルコイン事業を規制する法律、GENIUS Actの要件を満たした後に実施される。
この法律は2025年6月に米国上院で可決され、USDCのようなドルに裏付けられたステーブルコインの明確なルールが確立された。
アントは、年間1兆ドルを超える取引を処理しており、その3分の1は自社のブロックチェーンAntChainを経由している。
USDCを導入することで、HSBCやJPモルガンのような機関投資家や銀行にとって魅力的な、信頼性の高い決済インフラへのアクセスが可能となる。
これはアントのグローバルな事業拡大戦略の一環である。アントのブロックチェーン基盤であるAntChainが、コンプライアンス完了後にUSDCをホストする予定だ。
同社は将来的には、トークン化された預金や中央銀行デジタル通貨(CBDC)のサポートも視野に入れている。
市場への影響と今後の展望
この提携は、Circleにとっても大きな意味を持つ。
中国政府が人民元に裏付けられたステーブルコインを推進する中、アリペイの15億人のアクセス可能なユーザーを通じて、制限の多い中国のデジタル金融エコシステムへ参入する機会を得る。
一方で、中国の規制当局はUSDCのようなドルに影響されるステーブルコインに対して依然として警戒感を持っている。
しかし、アントが米国の規制に慎重に準拠する姿勢を示すことで、こうした地政学的な制約を乗り越える可能性がある。
このようなステーブルコインの動きは、ボラティリティの高さで知られるビットコインとは異なる価値提案を市場に示している。
統合の具体的なスケジュールは、コンプライアンス完了の時期が未定であるため、まだ設定されていない。
この提携は、テザー(USDT)や中国独自のCBDCプロジェクトなどの競合他社に影響を与え、世界の決済システムを再構築する可能性を秘めている。