コンピューターエンジニアであるジェームズ・ハウエルズ氏は8月4日、8000ビットコイン(BTC)を保管していたハードディスクの12年間にわたる捜索を断念した。
ハウエルズ氏は、2013年6月、自宅の清掃中に8000BTCの秘密鍵が保存されたハードディスクを誤って廃棄した。
当時、ビットコインの価値は約6300万ドルだったが、2025年には9億5000万ドルにまで高騰している。
市議会の発掘拒否と埋立地の制約
問題のハードディスクは、ウェールズのニューポート市にある埋立地に投棄された。
ハウエルズ氏は専門の発掘チームと高度な回収ツールを用意して捜索を試みたが、環境への影響や財政的な懸念を理由に、ニューポート市議会はこれを許可しなかった。
また、埋立地は深さ15メートル、廃棄物は約20万トンに及び、こうした環境的制約が市議会の判断に大きく影響した。
法的措置も及ばず、捜索に終止符
打開策として、ハウエルズ氏は2024年12月、ハードディスクの所有権を主張し、ニューポート市議会を相手取り約6億2000万ドルの損害賠償訴訟を提起した。
しかし、高等法院は2025年1月、「捜索は非現実的である」として訴えを退けた。
ハウエルズ氏は回収に成功した場合、収益の30%をニューポート市議会および住民に分配すると公約していたが、市議会の拒否と物流上の課題により、この試みは終わりを迎えた。
今回の捜索打ち切りは、初期のビットコインにおける損失が回復困難であること、そしてデジタル資産の回収を巡る規制上の障壁を浮き彫りにした。
ハウエルズ氏の事例は、暗号資産(仮想通貨)コミュニティにおいて教訓として語り継がれていくと見られる。
ビットコインのように物理的な管理が求められるデジタル資産では、オフラインで保管するコールドウォレットの活用が重要となる。