香港金融管理局(HKMA)は8日、法定通貨連動型ステーブルコイン(FRS)に関する新たなライセンス制度について、40社を超える事業者が申請準備を進めていることを明らかにした。
同制度は、5月21日に香港立法会において可決されたステーブルコイン条例(Cap. 656)に基づき、8月1日より施行される見通しだ。
本条例は、香港ドル(HKD)に価値を連動させたFRSの発行体に対し、HKMAによる事前のライセンス取得を義務付けるものだ。
厳格な審査基準と激化する市場競争
新たなライセンス制度は、ステーブルコイン条例に基づき、香港ドルなど法定通貨に連動するステーブルコインの発行・流通を規制するものだ。特にFRSの公募は認可機関に限定され、個人利用者の保護が重視されている。
ライセンス取得には、金融・テクノロジー・仮想通貨の各分野で高い専門性を備えていることが求められ、規模や実績で劣る事業者には参入が難しいとされる。
現在、JD Coin Chain、Circle Innovation、スタンダードチャータードとAnima Brands・HKTの共同事業体、Ant Groupの関連会社などを含む40社以上が申請を準備しているが、HKMAが承認するのは10社未満に絞られる見通しで、市場競争は早くも激化している。
規制遵守とデジタル金融ハブ構築に向けた取り組み
新たに施行されるステーブルコイン条例は、マネーロンダリングやテロ資金供与といった金融犯罪対策を含め、ステーブルコインに伴うシステミックリスクや金融安定性への懸念に対処するものだ。
HKMAは、事業者が円滑に規制へ適応できるようサンドボックス制度を導入し、ライセンス取得前のコンプライアンス体制構築や実証運用を支援している。
一方、香港政府はWeb3やフィンテック企業の誘致を進める中で、HKMAがその規制インフラの整備を担っており、制度的・技術的な両面から環境構築を進めている。
新たなライセンス制度は、ステーブルコインを活用した国際決済の効率化を促進するとともに、香港が信頼性の高いデジタル金融ハブとして国際的地位を確立するための重要な一手と位置づけられる。
今回の取り組みは、2022年の仮想資産政策声明や2023年の仮想資産サービスプロバイダー(VASP)制度に続く規制整備の一環であり、Ant GroupやJD.comなど中国本土の大手企業もその動きに関与している。
ライセンス取得企業は、アジア圏のデジタル通貨エコシステムにおいて戦略的優位を得る可能性があり、香港の動向には国際的な注目が集まっている。