X(旧Twitter)の共同創業者でBlock社のジャック・ドーシー氏は6日、分散型ピアツーピア(P2P)メッセージングアプリBitChatを公開した。
このアプリは、中央集権的なサーバーに依存しない通信の実現を目指している。
オフライン通信を実現する革新的技術
BitChatの最大の特徴は、オフライン環境での通信機能だ。
このアプリはBluetooth Low Energy(BLE)メッシュネットワークを活用し、インターネット接続がない場所でもメッセージを送受信できる。
近くにある他のユーザーのデバイスが中継点となり、最大300メートル以上の範囲で通信網を形成する。
通信はストアアンドフォワードモデルを採用しており、メッセージは各ノードを経由して宛先に届けられる。また、全ての通信はエンドツーエンドで暗号化される。
デバイス上で鍵が管理されるため、第三者によるメッセージの傍受は極めて困難だ。
同様のP2Pネットワーク技術は、特定の管理者を必要としないP2P仮想通貨取引所など、他の分散型アプリケーションでも活用されている。
さらに、プライバシー保護と監視対抗を目的として、メッセージは一時的にのみ保存される仕組みを取り入れている。
これにより、中央サーバーへの依存を完全に排除し、利用者のデータを保護する。
ドーシー氏が目指す分散化と検閲耐性の未来
ドーシー氏は以前から、ユーザーが自身のデータを管理できる分散型技術を強く推進してきた。
特に同氏は、分散化の理想を体現する存在としてビットコイン(BTC)とは何かという根本的な問いを追求し続けている。
同氏が支援する分散型SNSプロトコルBlueskyやNostrも、その思想を反映したプロジェクトである。BitChatは、この分散化への取り組みをさらに一歩進めるものだ。
特に検閲耐性を重視しており、政府によるインターネット規制や通信遮断が行われる環境下でも、自由なコミュニケーションを維持することを目指して設計されている。
将来的には、P2Pメッセージング機能にとどまらず、オフラインで機能する分散型通信プロトコルを構築することが長期的な目標だ。
この技術は、災害などの緊急時や、通信インフラが未整備な地域での活用が期待される。
こうしたプロジェクトは、特定のリーダーなしに運営されるDAOとは何かという、新しい組織のあり方を探る動きとも共鳴している。