欧州中央銀行(ECB)のロレンツォ・ビニ・スマギ元専務理事は4日、欧州がステーブルコイン市場で極めて小さな存在感しか持たない現状に警鐘を鳴らした。
ステーブルコインは、法定通貨の価値に連動する暗号資産(仮想通貨)で、国際決済やDeFiで中核的なインフラとなっているが、その99%は米ドルに連動しており、ユーロ建ての選択肢はほぼ存在しない。
この不均衡がデジタル金融の進展において欧州を周縁化させる恐れがあるという。
MiCA規制の限界と市場の課題
EUはステーブルコインを規制するため、仮想通貨市場規制法(MiCA)を導入したが、ユーロ建てトークンの採用拡大にはつながっていない。
むしろ、過剰な規制やEU内での断片的な対応がイノベーションを阻害しているとの批判もある。
結果として、米ドル建ての仮想通貨がデジタル金融における米国の優位性を強化し、欧州は国際金融の将来で周縁化するリスクに直面している。
また、ドル支配の構造は、米国の金融政策や制裁措置に対する欧州の経済的脆弱性を高めるという地政学的リスクもはらむ。
欧州が取るべき道筋と将来性
ビニ・スマギ氏は、状況打開に向けた解決策として、ECBが中央カウンターパーティーあるいはホールセーラーとして機能し、ユーロ建てステーブルコインを支援すべきだと提言した。
さらに、EUのデジタル戦略に沿った形で、決済や資本市場統合に向けた技術・規制基準の統一も重要だと述べた。
ユーロ建てステーブルコインの普及により、国境を越えた決済の効率が高まり、ユーロの利用範囲が広がると見られている。
米国ではすでに規制の明確化が進み、USDCやUSDTといったステーブルコインの利用が広がっている。
中国もデジタル人民元の導入を積極的に進めており、各国が独自のデジタル通貨戦略を推進する中、欧州の対応姿勢が問われている。