金融庁は30日、ステーブルコインの健全な発展に向けた分析に関する調査報告書を公表した。
この報告書はデロイトトーマツコンサルティング合同会社が作成したものであり、金融庁の公式見解ではない。
報告書は、ステーブルコインが市場で存在感を増すにつれて不正利用への懸念が浮上していると指摘。将来の健全な発展を確保する目的で、実態を把握するための調査を実施したと説明している。
市場拡大と規制の現状
日本におけるステーブルコインは、2023年6月の改正資金決済法によって電子決済手段として法的に位置付けられた。
しかし、規制の不確実性が要因となり、商業的な発行は停滞している状況だ。金融庁の金融審議会ワーキング・グループは2024年にこの問題の再検討を開始している。
一方で、市場では米ドルに連動するUSDCが2025年4月からSBI VCトレードで取り扱われるなど、活動は活発化している。
また、銀行預金をトークン化するDCJPYのような日本円連動のステーブルコインも計画されており、その動向が注目される。
日本の暗号資産(仮想通貨)市場は、登録交換業者28社、現物取引高が1兆9000億円(131億ドル)を超えるなど活況を呈している。
個人による利用が社債のような伝統的な資産を上回るペースで拡大しており、監督体制の強化が課題となっている。
今後の規制と市場への影響
金融庁は現在、ステーブルコインを含む仮想通貨を、金融商品取引法(金商法)上の金融商品として再分類する案を提示している。
この変更が実現すれば、仮想通貨ETF(上場投資信託)の組成が可能となり、規制の合理化が進むと期待される。特に世界中で注目されているビットコインETFの日本での実現も視野に入る。
同時に、機関投資家の参加を促すため、キャピタルゲイン課税の税率を最大55%から20%へ引き下げる案も議論されている。これは、世界的な規制の潮流に合わせた動きといえるだろう。
2025年3月には、発行者の責任を強化し、利用者の権利を明確化することを目的とした法案が提出された。
報告書の調査結果は、イノベーションを促進しつつ、システミックリスクに対処するという日本の広範な戦略に沿ったものであり、事後対応的な規制から事前予防的なガバナンスへの移行を示している。