韓国銀行(中央銀行)は6月30日、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実証実験における第2段階の実施を一時停止すると、参加機関に通知した。背景には、国内で注目が高まるステーブルコイン政策への対応や、関連法整備の進展がある。
この第2段階は、パイロットプログラム、漢江CBDCプロジェクトに続くフェーズとして、主要7行と連携して進められていた。第1段階では、約10万人の市民がCBDCを地元の加盟店で試用した。
ステーブルコインへの方針転換が影響
今回の決定の背景には、イ・ジェミョン大統領が主導する政策転換がある。大統領は、国内市場の活性化と資本流出の抑制を目的に、ウォンに連動するステーブルコインの合法化を優先課題に掲げている。
この方針を受け、金融機関はCBDCよりもステーブルコインの開発に注力するようになった。韓国銀行は、ステーブルコインとCBDCがどのように共存できるかを見極めるため、関連法の整備状況を監視する必要があると説明している。
規制の見通しが不透明な中で、共存の形が明確にならない限り、CBDCの実験継続は困難との判断が働いたとみられる。
参加銀行の負担と課題
CBDCのパイロットプログラムは、参加銀行に大きな財政的負担を課していた。報道によれば、参加した7行はそれぞれ約50億韓国ウォン(約5億3300万円)を費やしたという。
高額な費用に加え、導入に向けた具体的な計画が不明確だったことも、銀行側の継続参加への意欲を削ぐ要因となった。銀行は、より短期的な収益機会が見込めるステーブルコイン戦略に軸足を移しつつある。
CBDC実験の再開時期は未定。韓国銀行は、今後の法整備の行方や市場動向を見極めた上で、次のステップを決定するとしている。
今回の韓国の動きは、各国の中央銀行によるCBDC開発や、一般的な暗号資産(仮想通貨)規制の議論にも波紋を広げている。