暗号資産(仮想通貨)関連の金融サービスを手がけるテザー社は6月25日、イタリアのプロサッカークラブ、ユベントスFCの株式を追加取得し、第2位の株主になった。
出資額は1億2800万ユーロ(約217億6000万円)で、持ち株比率は10.7%に達した。
財政難のユベントスとテザー社の思惑
ユベントスは近年、財政難に直面している。セリエAの強豪クラブとして知られる同クラブだが、過去の降格なども影響し、流動性確保のため、最大1億ユーロ(約170億円)の資金調達計画を明らかにしていた。
今回のテザー社による出資は、この資金調達の柱となる動きだ。同社は米ドルと価値が連動するステーブルコインである、USDTの発行で知られ、スポーツ分野への関与を強化している。
伝統的な企業に対するブロックチェーン技術の導入支援を戦略の一環としており、単なる資金提供にとどまらず、経営への関与を強める狙いがあるとみられる。
経営権を巡る対立
テザー社は、ユベントスの取締役会への参加を求めており、将来的な増資計画や運営方針などの戦略的意思決定に関与する意向を示している。
ただし、クラブの経営権は、過半数の株式を保有するアニェッリ家の投資会社エクソール・グループが握っている。エクソールはテザー社を取締役会の議論から排除しており、両者の間に緊張が生じている。第2位の株主となったテザー社だが、現時点で経営への影響力は限定的とみられる。
こうした仮想通貨企業による伝統的組織への出資は、業界の垣根を越えた動きとして注目されている。
ユベントスの現在の時価総額は約11億6000万ユーロ(約1972億円)で、テザー社の出資比率はその約10%に相当する。今後も増資への参加姿勢を示しており、クラブの支配権を巡る構図は流動的だ。
こうした異業種からの資本参加は、ビットコイン(BTC)をはじめとするデジタル資産市場の成熟を象徴する動きとも言える。