現実資産のトークン化において、ステーブルコインが主要な役割を担うとの分析が18日、大手金融機関スタンダードチャータード銀行の報告書で示された。未公開株式や不動産など、非流動性資産の市場拡大が次の焦点とされる。
これらの市場は、参入コストの高さや情報の不透明性、流動性の制約といった構造的課題を抱えている。報告書は、トークン化によって分割所有やプロセスの自動化が可能になり、従来の金融商品ではアクセスが困難だった層にも市場参加の道が開かれると指摘した。
規制の進展と残された課題
資産トークン化の普及には、法的な枠組みの整備が不可欠だ。EUの暗号資産(仮想通貨)市場規制のMiCA法や米国のGENIUS法といった規制の進展は、ステーブルコインの発行やコンプライアンスに法的確実性をもたらしている。
MiCA規制の下では、ステーブルコイン発行者に完全な準備金の裏付けと透明性が義務付けられる。これにより、銀行はカストディアンや流動性提供者として、合法的にトークン化事業へ参画可能になった。
一方、米国のGENIUS法は、ステーブルコイン発行者が規模に応じて連邦または州の監督下で事業を行うことを認めるもので、証券としての分類を回避する道を開く。
しかし、国や地域によって異なる顧客確認や資金洗浄対策の要件が、国際的な普及を妨げる大きな障壁として残っている。
トークン化が拓く新たな投資機会
技術的な観点から見ると、トークン化は非流動性資産をデジタル化し、取引コストを削減する能力を持つ。これが採用を促進する主要な原動力と見なされている。
例えば、美術品やインフラプロジェクトをトークン化することで、代替投資へのアクセスが民主化される可能性がある。
投資家がポートフォリオの多様化を求める中、トークン化された未公開市場の商品に対する需要が高まっている。スタンダードチャータードの戦略もこの潮流に沿っており、同行は特にプライベートエクイティと現物コモディティのトークン化を優先事項として挙げた。
これらの分野は、トークン化による恩恵が最も大きいと分析されている。トークン化によって、決済時間の短縮や取引相手リスクの最小化、そして従来は困難だった価格発見機能の実現が期待される。
同行は、規制対応と市場インフラの効率化を進める中で、未開拓の資産クラスにおけるトークン化の実用化を視野に入れている。これらの資産がDEXで取引されるようになれば、流動性が高まり、取引の透明性や参加者の多様化が進む。
こうした環境変化は、アルトコイン市場の構造や資金フローにも具体的な影響を及ぼしている。