SUIブロックチェーン上の分散型取引所であるCetus Protocol(セタス・プロトコル)は8日、全機能を再開すると発表した。
5月22日のハッキング攻撃により約2億2300万ドルが流出していたが、包括的な復旧計画により運営再開にこぎつけた。
復旧に向けて、Cetusは複数の資金調達手段を実行。運営チームは自己資金から700万ドルを拠出し、流出したトークンの買い戻しに充てた。さらに、スイ(SUI)財団から3000万ドル相当のUSDCローンを確保した。
コミュニティ投票による資金回収
重要な転換点となったのは、SUIコミュニティによるオンチェーン投票だった。5月29日に実施された投票では、90.9%の賛成票により約1億6200万ドルの凍結資金の回収が承認された。
この資金は、Cetus、Sui財団、セキュリティ企業OtterSecが共同管理するマルチシグウォレットに移管された。
投票では54のバリデーターのうち53%が参加し、圧倒的多数で資金回収案が可決された。この結果を受けて、SUIトークンの価格は7%上昇し、市場の信頼回復を示した。
6月2日には、ハッキング事件と復旧過程について説明するパブリックTwitterスペースも開催され、透明性の確保に努めた。
セキュリティ強化と補償メカニズム
再開に伴い、Cetusプロトコルは大幅にセキュリティを強化した新バージョンを導入する。複数のサードパーティセキュリティ企業による監査を実施し、攻撃の原因となった脆弱性を修正した。
補償計画も具体化された。CETUS(セタス)トークン総供給量の15%にあたる資金が補償に割り当てられる。このうち5%はサービス再開時に請求可能となり、残りの10%は12カ月間にわたって直線的に権利確定する仕組みだ。
「過去2週間、我々のチームはセキュリティ事件に対処するため昼夜を問わず作業してきた。このプロセス全体を通してコミュニティが示してくれた忍耐と信頼に感謝している」とCetusはMediumでの声明で述べている。
業界への影響と教訓
今回の事件は、新しい暗号資産(仮想通貨)業界における分散型金融(DeFi)プロトコルのセキュリティ課題を浮き彫りにした。
ビットコイン(BTC)などの主要仮想通貨が安定した成長を見せる中、仮想通貨エコシステムにおけるリスク管理の重要性が改めて注目されている。
Cetusの復旧計画は、コミュニティガバナンス、運営資金、外部支援を組み合わせた包括的なアプローチとして業界の注目を集めている。今回の経験は、DeFiプロトコルの危機管理における新たなベンチマークとなる可能性がある。
再開後のCetusの運営状況と市場の反応が、今後のDeFi業界の発展に重要な示唆を与えることが期待される。