ドイツ政府は2024年7月、押収した暗号資産(仮想通貨)であるビットコイン(BTC)約5万枚を売却したと報じられた。
ドイツ政府によるビットコイン売却の詳細
ドイツ政府が売却したのは、過去に摘発された違法動画共有サイト「Movie2k」から押収したビットコインだ。売却は2024年6月19日から7月12日にかけて行われ、大部分は7月に集中した。
売却されたビットコインの総量は4万9858BTCに上る。 売却時の平均価格は1ビットコインあたり約5万7000ドルから5万7900ドルであった。
これにより、ドイツ政府は約28億7000万ドルの収益を得たとされる。なお、この売却は市場の上昇傾向を背景に、価格変動リスクを回避する目的で実施されたと見られる。
売却後の価格高騰と逸失利益
しかし、この売却判断が裏目に出た可能性が指摘される。ビットコインの価格はその後も上昇を続け、2025年5月には1BTCあたり約10万8000ドルから11万514ドルにまで高騰した。
もしドイツ政府が売却せずにビットコインを保有し続けていれば、その価値は約53億3000万ドルに達していたと試算される。 この結果、ドイツ政府は約23億ドルから24億6000万ドルに相当する潜在的な利益を逃したことになる。
さらに、今回のケースは仮想通貨の価格変動の大きさを改めて浮き彫りにした。政府機関が押収資産を扱う際、短期的なリスク回避を優先して法定通貨に換金する一般的方針と、長期保有による潜在的利益の最大化という戦略との間で、難しい判断を迫られることを示している。
今回のドイツ政府の売却は、ビットコイン価格が一時的に下落したタイミングで行われた後、市場が急速に回復した。
ビットコインは売却から数週間以内に6万5000ドルを超え、2024年10月には7万5000ドルに達していた。
このような大規模な売却は、一時的にビットコインの価格に圧力を与えたものの、機関投資家や上場投資信託(ETF)からの旺盛な需要により速やかに吸収された。
また、この一件は、政府が押収した仮想通貨を変動の激しい資産として即時売却すべきか、あるいは金準備のように戦略的準備資産として保有すべきかという議論を一層活発化させる可能性がある。