資産運用会社のカナリーキャピタルは4月18日、トロン(TRX)のステーキング機能を組み込んだ上場投資信託(ETF)の申請を米証券取引委員会(SEC)に提出し、正式に受理されたと発表した。
これにより、トロンのブロックチェーンを活用した利回り志向のETFが米国の規制当局による審査プロセスに入ったことになる。
TRXステーキングETFの概要と特徴
カナリーキャピタルがSECに提出したS-1フォーム(初期登録届出書)によると、この「ステークドTRX ETF」は、暗号資産(仮想通貨)であるトロンのTRX価格に連動することを目指す。
同時に、保有するTRXの一部を第三者のステーキングサービスプロバイダーを通じて運用し、利回りを生み出す設計だ。
このETFの仮想通貨カストディアン(保管・管理業者)には暗号カストディ会社のビットゴー(BitGo)が採用される予定だ。
また、TRXの現物価格のベンチマーク指数には、仮想通貨価格を追跡するインデックスの、コインデスク・インデックス(CoinDesk Indices)が採用される予定である。
過去、ゲイリー・ゲンスラー前SEC委員長時代には、イーサリアム(ETH)のETF申請においてステーキング機能を除外する動きが見られた。
しかし、今回のカナリーキャピタルの申請は、明確にステーキングを組み込んでおり、この点で従来のアプローチとは一線を画す。
この動きは、トロンが米国で上場される利回り志向のETFを獲得する最初のブロックチェーンとなる可能性を示している。
ステーキングとは、保有する仮想通貨をネットワークの運営に貢献させることで報酬を得る仕組みであり、投資家にとって新たな収益機会を提供するものとして注目されている。
承認への期待と規制の動向
今回の申請受理の背景には、SECの指導体制の変化がある。新たにSEC委員長に就任したポール・アトキンス氏は、仮想通貨に対して比較的友好的な姿勢を持つと市場では受け止められている。
これにより、ステーキングを基盤とする金融商品に対する楽観論が広がっている。これは、ステーキング機能を持つETF構造に対して懐疑的であったゲンスラー前委員長の姿勢とは対照的だ。
また、機関投資家の間では、ステーキング報酬を提供する仮想通貨関連の投資手段への関心が高まっている。利回りを生み出す資産への投資家の嗜好が変化していることが、この傾向を後押ししている。
このETFが承認されれば、将来的に他のブロックチェーンに特化したETFの登場を促し、多様な仮想通貨ファンドの普及につながる可能性がある。
一方で、資産運用会社のグレイスケール・インベストメンツ(Grayscale Investments)が同社のイーサリアム関連ファンドにステーキング機能を追加しようとする試みは、SECによる判断が遅延している。
これは、利回り生成型の仮想通貨商品に対するSECの立場が依然として定まっていないことを浮き彫りにしている。
規制当局は、ステーキングが証券法に準拠するかどうか、またカストディ業務や運用上のリスクについて引き続き慎重な評価を進めている状況だ。
なお、このETFのティッカーシンボルや運用管理手数料については、現時点では公開されていない。
これらの詳細は、今後の審査プロセスの中で明らかになる見込みだ。また、Cboe BZX取引所は2025年5月16日、このETFの上場申請を別途SECに提出した。
これは、取引所での売買を目指すETFにとって標準的な手続きである。SECの承認プロセスは、先に承認されたビットコイン(BTC)現物ETFの事例も参考にされるだろう。